落語の濫觴
三遊亭円朝

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)落語《らくご》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|時《じ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)たび/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 落語《らくご》の濫觴《らんしやう》は、昔時《むかし》狂歌師《きやうかし》が狂歌《きやうか》の開《ひらき》の時《とき》に、互《たがひ》に手を束《つか》ねてツクネンと考込《かんがへこ》んで居《を》つては気《き》が屈《くつ》します、乃《そこ》で其合間《そのあひま》に世の中の雑談《ざつだん》を互《たがひ》に語り合《あ》うて、一|時《じ》の鬱《うつ》を遣《や》つたのが濫觴《はじまり》でござります。尚《なほ》其前《そのまへ》に溯《さかのぼ》つて申《まうし》ますると、太閤殿下《たいかふでんか》の御前《ごぜん》にて、安楽庵策伝《あんらくあんさくでん》といふ人が、小さい桑《くは》の見台《けんだい》の上に、宇治拾遺物語《うじしふゐものがたり》やうなものを載《の》せて、お話を仕《し》たといふ。是《これ》は皆様《みなさま》も御案内《ごあんない》のことでござりますが、其時《そのとき》豊公《ほうこう》の御寵愛《ごちようあい》を蒙《かうむ》りました、鞘師《さやし》の曾呂利新左衛門《そろりしんざゑもん》といふ人が、此事《このこと》を聴《き》いて、私《わたくし》も一つやつて見たうござる、と云《い》ふので、可笑《をかし》なお話をいたしましたが、策伝《さくでん》の話より、一|層《そう》御意《ぎよい》に適《かな》ひ、其後《そののち》数度《たび/\》御前《ごぜん》に召《め》されて新左衛門《しんざゑもん》が、種々《しゆ/″\》滑稽雑談《こつけいざつだん》を演《えん》じたといふ。夫《それ》より後《のち》に鹿野武左衛門《しかのぶざゑもん》といふ者が、鹿《しか》の巻筆《まきふで》といふものを拵《こしら》へ、又《また》露野五郎兵衛《つゆのごろべゑ》といふものが出《で》て、露物語《つゆものがたり》でござりますの、或《あるひ》は露《つゆ》の草紙《さうし》といふものが出来《でき》ました。夫切《それきり》絶《たえ》て此落語《このらくご》と云《い
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