ないから、汝《てまえ》の親父は寄せ附けないって、アノ坊が大きくなると此の身代は悉皆《みんな》坊にやるから、彼奴を親と思うじゃア無い、お母《っかあ》ばかり親と思って勉強しろってね、それから学校へ往《い》くの」
茂「私《わし》はお前のお祖父さんにもお母《っかあ》にも面目無い、私はもう縁が切れて居るから他人のようなものだが、只《たっ》た一目お前のお母に逢って詫言《わびごと》を為《し》たくって、お父さんは態々《わざ/\》忍んで来たんだが、ちょいと内証《ないしょ》でお母を呼び出してくんな」
布「呼び出せってお母は来やアしないよ、お父さんに内証で逢うと、然《そ》うするとアノ誰も彼も家《うち》に置かないとお祖父ちゃんが然う云ってるのだから、お母さんに来いたって、お父さんには逢えないよ」
茂「それは然うでも有ろうけれども、お祖父さんに内証《ないしょう》でお母に逢い、一言詫がしたいんだ、お父さんは最う悉皆《すっかり》眼が覚めて、本当に辛抱人に成ったと然う云って、ちょいとお母さんを呼んで来てくれ」
布「だってお祖父ちゃんに叱られるもの、愚を極めた者に逢うと此方《こっち》も愚になるから逢うなと然う云ったもの
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