す」
岡山「打《ぶ》ったがどうした、大きな頭を敲き込んで遣ろうと思って打った」
重「無暗《むやみ》に打って失敬ではございませんか」
岡山「何がどうした、コレなんだ、化物見たいなものを遣《よこ》しやアがって」
と云いながら其処にありましたヌタの皿を把《と》って投《ほう》りましたから、皿小鉢は粉々になりましたが、他に若い衆《しゅ》が居ないから中へ這入る人もない。すると上《あが》り端《はな》に腰を掛けて居たのは、吾妻郡《あがつまごおり》で市城村《いちしろむら》と云う処の、これは筏乗《いかだのり》で市四郎《いちしろう》と云う誠に田舎者で骨太な人でございますが、弱い者は何処までも助けようと云う天稟《うまれつき》の気象で、三《さん》の倉《くら》の産《うまれ》で、今は市城村に世帯《しょたい》を持って筏乗をして母を養う実銘《じつめい》な人。此の人は力がある尤も筏乗は力がなければ材木を取扱いますから出来ません。市四郎は侠客《おとこだて》の気質でございます故見兼ねて中へ飛込み、
市「貴方《あなた》待ってくんなせえ、困った人だ皿を投《ほう》っちゃア困りますよ、弱《よえ》え者|虐《いじ》めして貴方《あんた》困るじゃアねえか、大概《ていげえ》にしてくんなせえ、此家《こゝ》な連藏《れんぞう》さんは居ねえが、内儀《かみさん》は料理して居る、奉公人は少ねえに皿小鉢を打投《ぶっぽう》って毀《こわ》れます、三百や四百で買える物じゃアねえ、大概《てえげえ》にするが宜《よ》い」
岡山「手前《てめえ》何んだ」
市「己《おら》ア此処へ用が有って来合せていたのだ」
岡山「手前《てめえ》仲へ這入るなら僕らの顔を立てるのが仲裁の当前《あたりまえ》だ」
市「お前方の顔を立てゝ上げてえが立てようががんしなえ、相手が悪いならば、あんた方の顔も立てゝ上げやしょうが、弱《よえ》え者いじめをするにも程がある、此様《こん》なかたはナニ子供のような重さんの頭をぶちなぐる事はハアねえだ」
岡山「そんな不具者《かたわもん》の顔を立てんでも宜《よ》い、拙者どもは芸妓《げいしゃ》小峯を呼びに遣わしたる処、病気と欺き参らんのみか、向うへ来て居るのは甚だ奇怪《きっかい》に心得るから申すのだ」
市「それが奇怪だって、そりゃ無理だ、芸妓だっても厭な処《とこ》へは来《き》なえ、貴方《あんた》の方は厭だから来なえのだろう」
岡山「コレ甚だ失敬な事申
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