》から送る事に致そうが、マ何うも主ある身の上でありながら、密夫を引入れるなどと云う事がありますか、左様な事を知らん其方《そなた》でもあるまいが、余程此の人を想うて居《お》るに相違ない……治平殿、此の高と云う女を引取り、女房にして遣る心か、但し斯う遣って遊びに来て居《い》る中《うち》の慰みものにする気か、亭主のあるものとは知らんと云いなさるが、風体《ふうてい》を見たって大概分ろう、是が茶屋女や芸者じゃアなし、宿帳《しゅくちょう》を検《あらた》めんと云うのは不都合じゃアないか、併し貴公も手を出したからには万更《まんざら》気に入らん訳でもあるまいから、真に貴公の妻《さい》に致して呉れるなら、改めて僕が離別して実家へ沙汰をするから、貴公の方で此婦《これ》の実家へ貰いに往《い》けば話も早く纒《まと》まって、少しも手間の要らん事《こっ》ちゃ、見合も何も要らん訳じゃが、何うか」

        七十一

治「へえ…左様でございます、貴方の方で全く愛想が尽きて御離縁に成りまして、此の御内室が御実家へ帰る事になれば、此の方から御実家へ話をしてお貰い申すかも知れませんが、何も枕を並べた訳じゃアございません、其処へお帰りがあって私を密夫に落されては甚だ残念でがすからな」
成「残念だって女の首筋へ手を掛けて抱締めた処《とこ》へ僕が帰って来て、障子を開けたればこそ離れたのであろうが、然《そ》う云う事を云って何処までも情を張れば、止むを得ず公然《おもてむき》にするばかりだ、けれども然《そ》んな事を為《し》ちゃア僕も此の上ない恥辱じゃから、敢《あえ》て好みはせん、好みはせんが貴公の出ように依って之を公然《こうぜん》にすれば、云わずと知れた重禁錮、貴公に土を担《かつ》がせる事を好みはせんが、止むを得ん、何うだえ」
治「へえ……私も決して好みは致しません、何うかソノ内分《ないぶん》のお計《はから》いが出来ますれば願いたいもので」
成「ウン然うせんければ僕も実に此の上ない恥辱じゃアないか、若《も》し此の事が人の耳に這入って、明日《あす》にも新聞紙上へでも出るような事があっちゃア僕も勤《つとめ》は出来ず、何うしても職を辞さんければならんから、今霄《こよい》の中《うち》直《すぐ》に僕は此者《これ》を一旦連れ帰って、前橋から高崎まで下《さが》って、それから実家へ帰る積りだ、離縁のうえ籍を送ったら、治平殿貴
前へ 次へ
全141ページ中130ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング