の事ゆえ真赤になりましてモジ/\為《し》ながら、
藤「私のような不束者を其の様な事を仰しゃって橋本さん…」
 と云う中《うち》に自然と情の深い処が顕《あら》われます。此方《こっち》も貰いたいから話も早くおッ附きました。
修「何れ改めて私《わし》が出る」
 と其の晩は此家《こゝ》へ一泊致し、翌日|一方《かた/\》は足利へ立ちましたが、これも奇縁でございまして、改めて久留島修理殿が東京《とうけい》へ出て参り、橋本幸三郎の母に会って右の縁談を申入れると、
母「それは幸いな事で、何うか願います」
 と幸三郎の母も異議なく承知を致しました。
 さてお話別れまして、伊香保に永井喜八郎と云う大屋がございます、夏季《なつ》は相変らず極《ごく》忙がしい処《とこ》でございます。此方《こっち》の三階はずーッと長く続《つな》[#ルビの「つな」は底本では「つなが」]がって、新座敷が玄関の上の正面に出来て居ますが、普請は中々上等で、永井喜八郎の宅《うち》の湯殿も綺麗で機械にて水を吹出して居ます。入浴した後《あと》で水にかゝり、風を引かんようにまた入浴致します方法を、加賀病院の岡先生が覚えてから湯殿も新しく出来、誠に繁昌な家《うち》でございます。此家《こゝ》の三階の角座敷に来て居りますのは前橋の商人で、桑原治平と云う男で、年齢《とし》四十五に相成り、早く女房に別れ、独身者で、年中|間《ま》さえあれば馴染も有りますから冬でも寒湯治《かんとうじ》と云うて参ります、独身で鞄を提げて参り、暫く保養して、また横浜へ往《ゆ》き、儲かると[#「儲かると」は底本では「儲かるとは」]伊香保へ参り、芸者も買い飽き二階に寝転んで頻《しき》りと新聞を読んで居りますと、ガラ/\と向《むこう》の二階の障子が開きましたから、ふと見ると、年頃廿六七にも成りましょうか色のくっきりと白い、鼻梁《はなすじ》の通りました口元の可愛らしい、目許《めもと》に愛のある、ふさ/\と眉毛の濃い好《よ》い女で、何《いず》れの権妻か奥さんか如何にも品のある方で、日に三度着物を着替るが、浴衣によって上へ引掛《ひっか》ける羽織が違うと云うので、色の黒い下婢《おんな》が一人《いちにん》附いて居ります。年は三十一二で其の下婢が万事|切盛《きりもり》を致して居ります。
治「あゝ好《い》い女だな」
 と治平は起上り、頻りと彼《か》の女の顔を見て居りますと、女の
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