を打附《ぶッつ》けました、木齋《もくさい》に此の角を円くさせて置いて下さいな」
幸「お前後生だから外へ出て一寸《ちょっと》派出所へ届けるか、其処らに巡査さんが歩いて居たら御出張を願って来てくれねえか」
由「へえ……私《わたくし》は巡査は極《ごく》いけねえんで、へえ何うも私は巡査さんを見ると何となく怖いので」
幸「お前は盗賊《どろぼう》じゃあるめえし」
由「ないが何処ともなく巡査さんは凛々《りゝ》しくって怖味《こわみ》がありますから、私《わたくし》が届けちゃいけますまい、何卒《どうぞ》是は一つお女中に願いましょう」
幸「チョッ……意気地《いくじ》がねえなア」
 と云いながら倉前へ来て見ますと、緋《ひ》の縮緬の扱《しご》きが一本、傍《そば》に浴衣が有りまして、ポタリ/\と血が垂れて居ますを見て由兵衞は慄え上り、
由「あゝ、血が、タ垂れて居ます、南無阿弥陀仏/\血と聞いたらまた腰が脱《ぬけ》ッちまいました」
幸「えゝ、此方《こっち》へ来な」
 と漸々《だん/″\》庭伝いに来て見ますと、庭に櫛だの簪《かんざし》が落ちてあって、向うを見ると桟橋の木戸が開いて居ます。
幸「ムヽ、……此処が開いて居るからにゃア此処からでも這入ったか知ら」
 と呟《つぶや》きながら桟橋へ出て見ますと血が垂れて、其処におりゅうの寝衣《ねまき》浴衣と扱きが落ちてあったのを取上げ透《すか》し見て、
幸「ムヽ、是はおりゅうの寐衣と帯だが……おい由さん、何を為《し》て居るんだ、私《わし》は此処に居るよ」
由「へえ……私《わたくし》はとても其処までは参られませんよ、へえ」
幸「チョッ……困るなア」
 と云ったが浮《うっ》かり倉の方へ這入り、盗賊《どろぼう》に長い刀《もの》を提《ひっさ》げて出られちゃア堪りませんし、由兵衞はぶる/\して役に立ちませんから、幸三郎が自身に駈出して参ると、丁度巡行の査公《さこう》に出会いました。

        五十三

幸「只今|私宅《わたくしかた》へ強盗が押入りまして、家中《うちじゅう》に血が垂れて居りますから、直《すぐ》に御出張を願います」
巡「ウン承知致した」
 と云ったが、一人では万一賊の方が多勢《おおぜい》ではいけませんから派出所へ立帰り、呼子《よびこ》にて同僚を集め、四人ばかりにて其の場へ駈附け、裏口台所口桟橋の出口へ一人《いちにん》ずつ立番をして居り、一人《いちに
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