けませんから、後から参ると云うので、病身で時々癪が発《おこ》ると云うが、その持病を癒そう為に伊香保へ来て居たのだが、貴方に一寸《ちょっと》岡惚れでしょう、彼《あ》の新造《しんぞう》がサ」
幸「止しねえ」
由「そこは僕が心得て居ますよちゃんと認めを付けて居ます、貴方の傍《そば》に……居ると気分がいゝので、貴方のお顔を見るとお癪も紛れて居るので、くよ/\と思うが病の根で、病気だから何うかお邪魔ながらお連れ申したいと云う忠義の心から、堅い女中だけれども側に連れて来たい念が一杯あるから来ますよ」
幸「悪いよ」
由「悪いたって構やアしません、あれが来て今の別嬪が来て落合ったら面白うございましょう、だが御亭主《ごてえし》が無ければ町人だって身分が宜ければ縁付《かたづ》くという、其処は又相談ずくでねえ、もし奥様が貴方の処へ嫁に来ると云ったら何うなさるえ、それとも鯉こくを持って来る女が好うがすか」
幸「ウヽ、そんな事を云っても分りゃアしねえよ」
由「分らないたって向うが奥様で此方《こっち》は丁度|権《ごん》の方《かた》で」
幸「止しねえよ、詰らねえ事を云って、まア湯へ這入って寝ようと云うのだが、腹が北山になって草臥《くたび》れたから酔ったよ」
由「貴方を酔わしたい、貴方は酔わないと真面目でいけません、ズーと酔ったって正気になって、助平根性を出してお仕舞いなさい、旅では構やアしません」
幸「止しねえ……まア/\そんなについではいけねえよ」
由「だがねえ、唯後からくっついて来るなア可笑しいねえ」
幸「可笑しいたって悪いよ」
由「だがね真面目で一生懸命に来るので、変な事があるもので」
幸「旧《もと》お出入りをしたお屋敷の御妾腹《ごしょうふく》と云うが、けれどもお眼に懸った事もねえが、何んだかお可愛そうな様な筋合《すじあい》があるのだよ」
由「お可愛そうだって何んだか知れませんが、姑《しゅうとめ》の意地の悪い奴、叔母さんか御隠居さんかが在《あ》って、拗《ひね》った事を云って、そうお茶をつぐからいけねえの、そうお菓子を盛てはいけねえ、赤いのは上へ乗っけて又其の上へ乗っけては赤いのが染《つ》くからいかねえとか、種々《いろ/\》な事を云う奴があるので、それが種になって段々お癪になったのだから、お癪を癒そうてえので……お癪てえば今来た娘《こ》も癪持に違《ちげ》えねえ」
幸「何故」
由「なぜったって
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