しき》もなく仁王立に突立って居ります。
警「これ、手前か向山の玉兎庵で口論の末士族|体《てい》の者を谷川へ打込《ぶちこ》んじゃというが、それは何うも宜しくない、どういう訳でそういう乱暴な事を致すか」
市「先刻《さっき》も私《わし》が云います通り、乱暴でねえで、何方《どっち》が乱暴だかねえ、貴方《あんた》の方で能く調べねえで無闇に来《こ》う/\と云って此処まで連れて来て、私もコレ用のある人間で、一日|幾許《いくら》って手間を取って居る者が、暇ア消《つぶ》して此処まで引張られるは難儀だから、参《めえ》らねえというものを何んでもという、私ア暇を消して参《めえ》ったが、私が悪《わり》いか向うな士族とかいうが悪いか見定めて人を引張ったら宜かろう」
警「そうじゃが、其の方は谷川へその士族体の者を打込んだという、巡査が確《しか》と是を見届け、又福田連藏方からも届けがあった故に出張した処《とこ》が、全く其の方が投込んだという、其の方住所姓名は何と申すか、えゝ其の方の住所姓名を申せ」
市「何も私《わし》ア……住持に悪体《あくてえ》を清兵衞《せいべえ》が吐《つ》いたという訳でねえが、ありゃア三の倉の間違えでしょう」
警「いや其の方の住んで居《お》る所は何と申す」
市「私《わし》の居《い》る処《とこ》か、私の居る処は吾妻郡の市城村で」
警「其の方は姓名は何と申すか」
市「姓名てえ何か」
警「其の方の名」
市「己《おら》ア名か、己ア市四郎と云います」
警「営業は何か」
市「えゝ」
警「営業」
市「なに」
警「分らん奴じゃ、ウーン営業を知らんてえ事があるか」
市「知りません、其様《そん》な事どうして、只の字せえ知らねえで習わねえに英語なぞ何《な》に知る訳がねえ、それは外国人《げえこくじん》のいうことだ」
警「英語ではない、営業というは其の方の渡世《なりわい》商売じゃ」
市「商売《しょうべえ》か商売は市四郎てえ筏乗でがんす」
警「何故《なにゆえ》あって向山へ今日《こんにち》参ったか」
市「何をたって連藏さんとは心安い者《もん》で、茸《きのこ》を些《ちっ》とばかり採ったから商売の種に遣りてえと思って持って来て、縁側で一服|喫《や》って居ると、向うの離座敷で暴れ廻る客があるだ、若い衆を擲《なぐ》っていけえこともねえ皿を打壊《ぶちこわ》したりして見兼ねたから、仲へ這入《へえ》って何故《なぜ》此様《こ
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