手前ばかりは身寄頼りのない身の上だから、辛抱次第で行々《ゆく/\》は暖簾《のれん》を分けて遣る、其の代り辛抱をしろ、苟《かりそめ》にも曲った心を出すなと熟々《つく/″\》御意見下すって、余《あんま》り私を贔屓《ひいき》になすって下さいますもんだから、番頭さんが嫉《そね》んで忌《いや》な事を致しますから、相談も出来ませんが、何うしても私《わたくし》が女郎《じょうろ》買でも為《し》て使い込んだとしきゃア思われませんから、面目なくって旦那さまに合《あわ》す顔はございません、なに宜しゅうございますからお構いなく往らしって」
長「いけねえなア、何うしてもお前《めえ》死《しな》なくッちゃアいけねえのか………じゃア仕方がねえ、金ずくで人の命は買えねえ、己も無くッちゃアならねえ金だが、お前に出会《でっくわ》したのが此方《こっち》の災難《せえなん》だから、これをお前に………だが、何うか死なねえようにしてくんなナ、え、おう」
男「ヘエ、死なないように致しますから、お構いなく往らしって下さいまし」
長「お構《かめ》えなくッたって……じゃア往くから屹度《きっと》死なねえとはっきり極りをつけてくんなよ」
前へ
次へ
全38ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング