ったのは」
七「堀浚《ほりさら》[#「浚」は底本では「凌」]いの土の盛ってあるに吐《つ》いた反吐を掻廻して捜し出しましたから、再び返しにまいりましたので」
殿「どれ、見せろ」
 と手に取上げてつく/″\見られ、
殿「これは泥の中へ埋っていたものだ、金色が違っている、書いた文字が摺《す》れて分らんようになって居《お》る、大方これは堀浚[#「浚」は底本では「凌」]いの泥と一緒に出ていたを、其の方がだん/″\掻廻したので泥の中から出たんで、全く天から其の方に授かったところの宝で、図らず獲《え》たんだの」
七「へえ……それは飛んだ事をしました、彼処《あすこ》へ往って置いて来ましょうか」
殿「いや其の方の手許に置いて宜かろう、授かり物じゃ」
 と早々石川様から御家来をもちまして、書面に認《したゝ》め、此の段町奉行所へ訴えました。正直の首《こうべ》に神宿るとの譬《たとえ》で、七兵衞は図らず泥の中から一枚の黄金を獲ましたというお目出度いお話でございます。
[#地から2字上げ](拠酒井昇造速記)



底本:「圓朝全集 巻の三」近代文芸・資料複刻叢書、世界文庫
   1963(昭和38)年8月10日発行
底本の親本:「圓朝全集 巻の三」春陽堂
   1927(昭和2)年1月28日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
ただし、話芸の速記を元にした底本の特徴を残すために、繰り返し記号は原則としてそのまま用いました。
また、総ルビの底本から、振り仮名の一部を省きました。
底本中ではばらばらに用いられている、「其の」と「其」、「此の」と「此」、「彼《あ》の」と「彼《あの》」は、それぞれ「其の」「此の」「彼の」に統一しました。
また、底本中では改行されていませんが、会話文の前後で段落をあらため、会話文の終わりを示す句読点は、受けのかぎ括弧にかえました。
※底本中「七兵衞」と「七兵衛」が混在しますが、「七兵衞」に統一しました。
※「/″\」の誤用と思われる箇所もありますが、底本通りとしました。
入力:小林繁雄
校正:門田裕志
2003年11月6日作成
青空文庫作成ファイル:
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