とで、私は心配致しますが、だからと申して黙っていても何うせ知れますからな」
重「何を」
傳「へえー、誠に何うも恐入って申上げられませんが、実は貴方様に対して御新造様がな、何うも何う云うものか、誠に恐入りますな」
重「大分恐入るが、何《なん》だい」
傳「へえ……申し上げませんければ他《ほか》から知れますからな、却《かえ》って御家名を汚《けが》すようになりますから、御両親様も……また貴方の名義を汚す一大事な事でございますから、外《ほか》のお方様なら申上げませんが、あなた様でございますから何うか内聞に願い、そこの処は世間に知れぬうち御工夫が付きますように参りましょうかと存じますが、何うか御内聞に、何うも何とも恐れ入りまして」
重「恐れ入ってばかりではとんと何だか分らんが、他の事と違って家名に障《さわ》ると、私《わし》が身は何うでもよろしいが、中根の苗字に障っては済まぬが、何《なん》じゃか言ってくれよ、よ、傳助」
八
傳「実は申上げようはございませんが、もう往来も途切れたから申上げますが、御新造様は誠に怪《け》しからん、密夫《みそかお》を拵《こしら》え遊ばして逢引を致しますので」
重「ふう嘘を云え、左様な嘘をつくな決して左様な事は有りません、世間の悪口《わるくち》だろうから取上げるなよ、私《わし》が来ましてから御新造は些《ちっ》とも他《ほか》へ出た事はないぞ、弁天へ参詣に行《ゆ》くにも小女が附き、決して何処《どこ》へも行った事はない」
傳「それが有るのでへえ……実に恐入りますがな、不埓至極なのはお金と申す旧来勤めて居りました団子茶屋おきん、へい彼奴《あいつ》が悪いので、へい、奉公して一つ鍋の飯を喰いました女でございますから宜《よ》く私《わたくし》は存じて居りますが、口はべら/\喋るが、彼奴が不人情で怪《け》しからん奴で、お嬢様を自分の家《うち》の二階で男と密会をさせて、幾らかしき[#「しき」に傍点]を取る、何如《いか》にも心得違いの奴で」
重「そりゃア誰《たれ》がよ、誰が左様なる事を云う、相手は何者か」
傳「相手はそれは何《ど》うも、白島山平と云う彼《あ》の下役の山平で、私《わたくし》も外《ほか》の方なら云いませんが貴方様だから、お舅御様《しゅうとごさま》のお耳にはいらぬ様にお計らいが附こうと思って申しますが、何うも恐入ります」
重「嘘を云え、白島山平は
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