めえ》へ転んだから、真《ほん》の弥次馬に殴ったのが、丁度|親父《おやじ》を殺した奴を打殴《ぶんなぐ》ると云うなア是が本当に仏様の引合せで、敵討をするてえのは……何う云う訳なんです」
山「訳を申せば長いことでござる、予《かね》て噂に聞《きゝ》ましたがお前が正太郎|様《さん》で、葛西の文吉殿の方《かた》に御厄介に成っていらしった」
正「え……彼《あ》れは叔父で……お繼、何か小岩井のお婆さんの処《とけ》え行きてえから、お婆さんに己《おれ》の詫言《わびごと》して呉んねえ、父《ちゃん》の敵を討つ助太刀をしたと云う廉《かど》で詫言をして呉んねえ、己《おら》アもう腹一抔|借尽《かりつく》して、婆さんも愛想《あいそ》が尽きて寄せ附けねえと云うので、己《おれ》も行ける義理は無《ね》えからなア、土浦へ行って燻《くす》ぶって居たが、その中《うち》に瘡《かさ》は吹出す、帰《けえ》る事も出来ず、それからまア漸《やっ》との事《こっ》て因幡町《いなばちょう》の棟梁の処《とけ》え転がり込んだが、一人前《いちにんめえ》出来た仕事も身体が利かねえから宰取をして、今日始めて手伝《てつでえ》に出て、然《そ》うして妹に遇《あ》うと云うなア不思議だ、こりゃア神様のお引合せに違《ちげ》え無《ね》え、何うも大きく成りやアがったなア此畜生《こんちきしょう》、幼《ちい》せえ時分別れて知れやアしねえ、本当に藤屋の娘か、おい立って見や……これをお前《めえ》さんのとこの子にしたのか……一廻り廻れ」
などと云う。
山「誠に是れは思掛けないことで、何うもその死んだ七兵衞殿のお引合せと仰しゃるは御尤もなこと、実は私《わし》の忰山之助と申す者と三年前から巡礼を致して、長い間旅寝の憂苦労《うきくろう》を重ね、漸《ようや》く今日|仇《あだ》を討ちましたが、山之助は先達《せんだっ》て仔細有って亡なりました、それ故に手前忰の嫁故引取り娘に致して、手前が剣術を仕込みまして、何うやら斯うやら小太刀の持ち様も覚える次第、まことに思掛けないことで、葛西の文吉様にもお世話に成りましたから、手前同道致してお詫言に参りましょうが、まア兎も角も敵の……えゝ人が立って成らぬなア」
正「私《わっち》が一太刀」
山「いや、お前はお兄様《あにいさん》でも初太刀《しょたち》は成りません、お繼は七年このかた親の仇を討ちたいと心に掛けましたから、お繼が初太刀で、お前
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