れ、踏外《ふみはず》して薄縁を天窓《あたま》の上から冠《かぶ》ったなりどんと又市は揚板の下へ落ちる、処へ得たりとお繼は、
繼「天命思い知ったか」
と上から力に任して抉《こじ》ったから、うーんと苦しむ。すると嬉しがって左官の宰取が来まして
宰取「この野郎/\」
と無闇に殴る処へ、人を分けて駈けて来たのは白島山平。
山「巡礼の娘お繼と申す娘は何処《どこ》に居りますか」
繼「あゝお父様《とっさま》」
山「おゝ/\/\討ったか」
繼「お父様宜く来て下すった」
山「それだから申さぬ事じゃア無い一人で……怪我は無いか」
繼「いゝえ怪我は致しませぬ、首尾|好《よ》く仕留めました」
山「あゝそれは感服、敵の又市は何処にいる」
繼「縁の下に居ります」
山「縁の下に……じゃア縁の下へ隠れたか」
繼「いゝえ只今落ちましたから其処《そこ》を上から突きましたので」
山「うん然《そ》うか、やい出ろ」
と髻《たぶさ》を取ってずる/\と引出しますと、今こじられたのは急所の深手、
又「うーん」
と云うと田月堂の主人《あるじ》はべた/\と腰が抜けて奥へ逃げる事も出来ません。山平が是を見ると、地面まで買ってくれた田月堂の主人が鼻の先に居るから、
山「これは何うもお店を汚《けが》しまして何とも、御迷惑でございましょうが、これは手前娘で、先達《せんだっ》て鳥渡《ちょっと》お話をいたした、な、が全く親の仇討《あだうち》に相違ございません、委《くわ》しい事は後でお話を致しますが、決して御迷惑は懸けませんから御心配なく」
と云ったが田月堂の主人は中々口が利けません。
田月の主「え…あ…うん…うんお立派な事でございます」
と泣声を出してやっと云いました。
山「さア是れへ出ろ、これへ参れ……これ見忘れはせぬ、大分《だいぶ》に汝《うぬ》も年を取ったが此の不届者め、汝《てまえ》が今まで活《い》きているのは神仏《しんぶつ》がないかと思って居た、この悪人め、汝《てまえ》は宜くも己の娘のおやまを、先年信州白島村に於て殺害《せつがい》して逐電致したな、それに汝は屋敷を出る時七軒町の曲り角で中根善之進を討って立退《たちの》いたるは汝に相違ない、其の方の常々持って居た落書《らくがき》の扇子《おうぎ》が落ちて居たから、確《たしか》に其の方と知っては居れど、なれども確かな証《しょう》がないから其の儘打捨ておかれたのであるが、
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