っぱり団子茶屋をして居りますがねえ、何うも何でございますね、何うもつい此方《こちら》の方へは参りませんで」
山「じゃア何か屋敷の様子はお前御存じだろうが、武田や何か無事かえ」
照「あ、お父様《とっさま》やお母様《っかさま》はお達者かえ…今以て帰る事も出来ない身の上で」
きん「あの御新造様も大旦那様もお逝去《かくれ》になりました、それに御養子はいまだにお独身《ひとり》で御新造も持たず、貴方がお出《いで》遊ばしてから後《あと》で、書置《かきおき》が御新造様の手箱の引出《ひきだし》から出ましたので、是は親不孝だ、仮令《たとえ》兄の敵を討つと云っても、女一人で討てるもんじゃ無い、殊に亭主を置いて家出をしては養子の重二郎に済まない、飛んだことだと云って御新造は一層御心配遊ばして、お神鬮《みくじ》を取ったり御祈祷をなすったりしましたが、それから二年半ばかり経ちまして、御新造がお逝去になり、それから丁度四年ほど経って大旦那様もお逝去」
照「おやまア然《そ》うかえ、心得違いとは云いながら親の死目《しにめ》にも逢われないのは皆《みん》な不孝の罰《ばち》だね……私も家《うち》を出る時には身重だったが、翌年正月生れたんだよ」
きん「そう/\お懐妊でしたね」
照「それが女の子で、旅で難儀をしながらも子供を楽《たのし》みに何うかしてと思って、播州の知己《しるべ》の処へ行って身を隠し、少しの内職をして世帯《しょたい》を持っていた所が、其処《そこ》も思う様《よう》に行かず、それから又長い旅をして、その娘《こ》も十五歳まで育てたが亡《なく》なったよ」
きん「へえお十五まで、それは嘸《さぞ》まア落胆《がっかり》遊ばしたでございましょう、お力落しでございましょう御丹誠甲斐もない事でねえ」
照「まア種々《いろ/\》話も聞きたいから少し……」
山「何だか表が騒がしいが何だ」
と云って聞いて居ると、ばら/\/\/\と人通りがして、
甲乙「なに今敵討が始まった、巡礼の娘と大きな侍と切合《きりあい》が始まった、わーッ/\」
と云って人が駈けて通るから山平は驚きまして、
山「これ何を、それ大小を出しな」
きん「何でございますえ」
山「何でも宜しいから大小を……きんやお前|此処《こゝ》に居て…お前居ておくれ、二人|往《い》かなければならんから留守居をして」
金「何うなすったんでございますえ」
山「何うなすった所
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