う是《こ》りゃア水攻めにするより外に仕方が無いと云って、どん/\水を入れて見ると、下へ脱《ぬ》けて落《おち》る処が有るから遂々《とう/\》水攻《みずぜめ》も無駄になって、何うしたら宜かろうと只浅間山を多勢《おおぜい》で取巻いて居るだけじゃが、肝腎の彦五郎は裏穴から脱けて、相変らず人を殺したり追剥《おいはぎ》を為《す》るので、これには殆《ほとん》ど重役が困っている所に、一人の修行者《しゅぎょうじゃ》が来て、あなた方は幾ら此処《こゝ》を取巻いて居ても北條彦五郎を取押える事は出来ません、殊に北條彦五郎は大力無双《だいりきぶそう》で、二十五人力も有るという事だから、兎《と》てもいけぬに依ってお引揚げなさいと云うから、引揚げたら何うすると云うと、私《わたくし》一人に盗賊取押え方《かた》を仰付けられゝば有難いと云うので、然らば修行者は何《ど》のくらいな力が有るかと云うと、私は力が有ります、何うか盗賊取押えを仰付けられたいと云うから、段々評議をした所が、何せ今までのように頑張っていても出るか出ないか知れぬから、当人が取押えると云うなら遣《や》らして見ろという仰しゃり付けで、これから其の修行者に取押えを言い付けた所が、其奴《そいつ》のいうには手前の脊負《しょ》った笈《おい》に目方が無くては成らぬから、鉄の棒を入れるだけの手当を呉れと云うから、多分の手当を遣ると全く金を取って逃げる者でも無く、それから手当の金で鉄の重い棒を買い、笈の中へ入れて、彼《か》の北條彦五郎の隠れて居るという穴の側へ行って、其処《そこ》へ笈を放り出して、労《つか》れた振《ふり》をして修行者が寝て居ると、ある月夜の晩に彦五郎の手下が穴の側へ見張に出て見ると、修行者が居るから、「これ何うした」「私《わたくし》は歩けません」「何ういう訳で歩けぬ」「道に労れて歩けませんから、寝て居ります」と云うと、「此処に居ては成らぬから行《ゆ》け」「行くにも行かないにも荷物が脊負《しょ》えません」「脊負えぬなら脊負わせて遣ろう」と云うので手下の奴が動かそうとしたが中々動かぬから、こりゃア何ういう重い物だか、是を脊負うのは剛《えら》い者だといって手下の者が皆寄ったが持てぬから「手前《てめえ》これを脊負って歩くか」「歩けますが、此の通り足を腫《は》らしたから仕様が有りません」と云うので足を出して見せると、巧《うま》く拵えて膏薬を貼って居
前へ
次へ
全152ページ中138ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング