す。先《まず》一番始まりが紀州の那智、次に二番が同国紀三井寺、三番が同じく粉川寺《こがわでら》、四番が和泉の槙《まき》の尾《お》寺、五番が河内の藤井寺、六番が大和の壺坂、七番が岡寺、八番が長谷寺、九番が奈良の南円堂《なんえんどう》、十番が山城宇治の三室《みむろ》、十一番が上《かみ》の醍醐寺《だいごでら》、十二番が近江《おうみ》の岩間寺《いわまでら》、十三番が石山寺、十四番が大津の三井寺と段々|打巡《うちめぐ》りまして、三十三番美濃の谷汲《たにくみ》まで打納めまする。其の年も暮れ翌年になると、敵を捜しながら、段々と東海道筋を下って参り、旅をすること丁度足掛三年目の二月の五日に江戸へ着《ちゃく》致しましたが、是と云って外《ほか》に頼る処もございませんから、先《まず》葛西の小岩井村百姓文吉の処に兄が居りはしまいかと思って、村の入口で聞きますると、それはあの榎《えのき》のある処から曲って行《ゆ》くと、前に大きな榛《はん》の木が有るからと教えられて、其の通り参って見ると、百姓家は土間が広くしてある、その日当りの好《よ》い処に婆様《ばあさま》が何かして居りますから、
繼「御免なさいまし/\」
男「はい何だえ」
繼「あのお百姓の文吉さんのお宅は此方《こちら》でございますか」
男「あい文吉さんは此方《こっち》だが、何だえ」
繼「あのお婆さんはお達者でございますか、若《も》しお婆さんは亡くなって、伯母さんでございますか」
男「婆《ば》アさま/\巡礼どんが二人来て、婆アさまに逢いたいと云って立ってるだ」
婆「はい何方《どなた》でございます、巡礼どんかえ、修行者が銭を貰いに来たら銭を上げるが宜《よ》い、知ってる人が尋ねて来たかえ」
繼「御免なさいまし、貴方が此方《こちら》のお婆さんでございますか」
婆「はい私《わし》が此処《こゝ》の婆《ばゝ》アでございますよ、あんたア誰だかねえ」
繼「あなたお忘れでございますか、私《わたくし》は湯島六丁目藤屋七兵衞の娘繼と申す者でございます」
婆「あれや何うも魂消《たまげ》たとも、何うも巨《でか》く成ったアなア、まア宜く尋ねて来たアなア、巡礼に成って来ただかえ」
繼「はいお婆さんに逢いたいと思って遠隔《とお/″\》の処を参りました」
婆「まア宜く尋ねて来たよ、是やア誰か井戸へ行って水を汲んで来て……足い洗って上りなよ……おう/\草鞋|穿《ばき》で……汝《
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