みやまつ》といふ茶屋《ちやや》よ。梅「へえゝ……これは甃石《しきいし》でございませう。近江屋「おや/\よく解《わか》つたね。梅「へえ是《これ》は下駄《げた》を履《は》いて通《とほ》ると、がら/\音がしますから解《わか》りますが、是《これ》は盲人《まうじん》が歩きいゝやうに何処《どこ》へでも敷《し》いて有《あ》るのでせう。近江屋「なアに社内《しやない》ばかりだアね、そろ/\出掛《でか》けようか。梅「へえ有難《ありがた》う存《ぞん》じます、只今《たゞいま》杖《つゑ》を持つてまゐりませう。近「もう杖《つゑ》も要《い》らねえから薬師《やくし》さまへ納《をさ》めて往《い》きな。梅「へえ誠に有難《ありがた》う存《ぞん》じます……へえゝ何《ど》うも日本晴《につぽんば》れがしたやうだてえのは、旦那《だんな》さま此事《このこと》でございませう、本当に有難《ありがた》いことで。近「まア芽出度《めでた》かつた。梅「旦那《だんな》々々《/\》これは何《なん》でげす。近「生薬屋《きぐすりや》の看板《かんばん》だよ。梅「あれは……。近「糸屋《いとや》の看板《かんばん》だ。梅「へえゝ……あれは。近「人が見て笑つてるに、水菓子屋《みづぐわしや》だ。梅「へえゝ……あ彼処《あすこ》に在《あ》る円《まアる》いものは何《なん》です、かう幾《いく》つも有《あ》るのは。近「あれは密柑《みかん》だ。梅「あの色は何《なん》と云《い》ふんです。近「黄色《きいろ》いてえのだ。梅「へえゝ……密柑《みかん》には異《ちが》つたのが有《あ》りますなア、かう細長《ほそなが》いやうな。近「フヽヽあれは乾柿《ころがき》だ。梅「乾柿《ころがき》、へえゝ彼《あれ》は。近「第一の銀行よ。梅「成程《なるほど》噂《うはさ》には聞いて居《を》りましたが立派《りつぱ》なもんですね……あれは。近「橋だ、鎧橋《よろひばし》といふのだ。梅「へえゝ立派《りつぱ》な物《もん》ですね何《ど》うも……あの向うへ往《い》きますのは女《をんな》ぢやアございませんか。近「然《さ》うよ。梅「へえゝ女《をんな》てえものは綺麗《きれい》なものですなア、男《をとこ》が迷《まよ》ふな無理もありませんね。近「あれは何処《どこ》かの権妻《ごんさい》だか奥《おく》さんだか知れんが、人柄《ひとがら》で別嬪《べつぴん》だのう。梅「へえゝ綺麗《きれい》なもんですなア、私共《わたしども》
前へ
次へ
全15ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング