を私《わっち》が通り掛ったら、何《ど》うだろう」
 女「誰《だ》れが」
 勘「私《わっち》さ、扮装《なり》を拵《こしら》えるね此様《こん》な扮装《いでたち》じゃアいけないが結城紬《ゆうきつむぎ》の茶の万筋《まんすじ》の着物に上へ唐桟《とうざん》の縞《らんたつ》の通し襟の半※[#「※」は「ころもへん+(纒−糸)」、535−10]《はんてん》を引掛《ひっか》けて白木《しろき》の三尺でもない、それより彼《あ》の子は温和《おとなし》い方が好きですかねえ、草履より駒下駄を履いて前を通りましょうお筆さんが見ると屹度声をかけますよ、おや勘次さん、おや姉《ねえ》さんお宅は此処《こゝ》ですかえ、はア斯《こ》んな処へ来ました、まアおよんなさいよお茶を飲《あが》って行ってお呉んなさいよと先方《むこう》で云うに違いない、義理堅い娘《こ》だから、水や何か汲んでもらった廉《かど》があるからお上《あが》んなさいましよと云うねえ、此処で私《わっち》が旦那でもお在《い》でだとお邪魔に成るからと云うと、いゝえ誰も居ませんから、まアお上んなさいましよと手を取って引張るね、寄りたいけれども其の時ゃア私は我慢して、何《いず》れ又というので無理に振り払って帰るね、二度目に通る時に又おつな扮装《なり》をして今度は此方《こっち》から声を掛けると、まア上ってお呉んなさいと引張り込んでお茶を入れる、家《うち》に酒も附いて居るから一寸お一つ召し上れと私の酒好きを知っているから、気が付く子だから酒を出す、これは済みませんねえ、旦那は毎晩お出でなさるかと聞くと、いゝえ毎晩は来ません通い番頭で年を老《と》って居ますから、月に漸く三度位しきゃア来ません、時々遊びに参っても宜うございますか、宜いどころじゃアありません、どうぞ始終遊びに来て下さい、姐《ねえ》さんはお壮健《たっしゃ》ですかとお前さんを聞くよ、情愛があるから……それから屡々《ちょく/\》遊びに行って何時も御馳走に成って済まないと偶《たま》には何か奢ってやるね、度々《たび/\》行く様に成るとそこは阿漕《あこぎ》の浦に引網《ひくあみ》とやらで顕《あらわ》れずには居ない、其の番頭が愚図/\云うに違いない、然《そ》うすると私が依怙地《えこじ》に成って何を云やアがる此方《こっち》じゃア元より一つ長屋に居たんだ、確乎《ちゃん》と約束がある女だ、誰《たれ》に断って此の女を慰み者にし
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