れ時藏《ときぞう》[#「時藏《ときぞう》」は底本では「由藏《よしぞう》」と誤記]は帰ったか何うも知れないか」
時「へえ、王子《あちら》の方でも、何うも彼方《あちら》へ入《いら》っしゃいませんそうで彼方でもお驚きで、何《いず》れ此方《こちら》からお訪ね申すという事で」
孫「夫は困ったなア、あの瀧二郎《たきじろう》は帰って来たか」
瀧「へえ、只今帰りました」
孫「何をマゴ/\して居るのだ早く此方《こっち》へ来て知らせて呉れないでは困るなア、何うだのう、知れないか」
瀧「へえ、伊皿子台《いさらこだい》の方へもお出でがないって、何うもお驚きで誠に飛んだ事でお仕合せな事でと斯《こ》う申しました」
孫「何がお仕合せだ、何《なん》だか解らん口上ばかり云って……まアも一度本気になって迷児《まいご》を尋ねに出て貰いたい」
瀧「迷児どころではない、もう十八になった娘でございますから迷親《まいおや》で」
孫「誰だ、そんな悪口《わるくち》をいうのは」
御主人は立腹致す、大騒ぎで、是から八方へ手を分けて尋ねまする中《うち》に、築地の方へ流れて来た死骸は是々だというから直《すぐ》に行って見ると全く娘の死骸でございますから、直に検視を願って漸く家《うち》へ引取って、野辺の送りを致すやら実に転覆《ひっくりかえ》るような騒ぎ、それで段々|延々《のび/\》になって彼《か》の娘の事をきく間《ま》もないほどの実に一通りならん愁傷で、先《まず》初七日《しょなぬか》の寺詣りも済みましたが、娘は駈出そうと思っても人が附いて居るから、又駈出して愁傷の処を騒がせて厄介を掛けては気の毒と思ったから、奥の狭い処へ這入って只|此処《こゝ》の親達の心を察しは[#「察しは」は「察しては」の誤記か]泣き、自分の親も嘸《さぞ》案じて居るだろうと心配しては泣き、見るにつけ聞くにつけても涙ばかり、漸く二七日《にしちにち》も済みましたから、
孫「どうも大きに御苦労だった、今度は変死の事だから寺詣りも何も派手には行《ゆ》かず、碌々他に何も致さんが、何《いず》れ仏の為には功徳をする積りだ……あのなに何《なん》とか云った、あの娘《こ》の名よ」
妻「まだ申しませんよ」
孫「困るのう、何とか云って呉れゝば宜《い》いに、何うしても云わんかえ、是へ呼んでおくれ、婆さんお前に昨夜《ゆうべ》云った事を得心するだろうか、まア姉さん
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