し申して居る」
藤「へえ実は私《わたくし》も心配致して居ましたが、殿様が遣ったと仰しゃって下さいますれば何も仔細ない事で」
武「明日は少し早く四ツ時分から腰掛へ出て居て貰い度《た》い」
藤「へえ/\四ツ時分からへえ成程」
武「えゝ此の近辺でなんですかえ、金満家《かねもち》は何処《どこ》ですな」
藤「えゝ金満家と申しますと」
武「いえさ、町内で金満家の聞えの有る家《うち》は」
藤「左様でございますなどうも太刀伊勢屋《たちいせや》などは大層お金持だそうで」
武「他には」
藤「質屋で伊勢銀《いせぎん》と云うが有ります」
武「じゃア伊勢銀の方に仕様」
藤「是からお出でに成りますなら御一緒に参りましょうか」
武「いや一緒に行かんでも宜しい、エ、明日お筆さんをお前が引取に来なければならんから、組合を連れて印形《いんぎょう》持参でお出《いで》を願い度《た》い」
藤「宜しゅうございます、承知致しました」
武「あれは天正金《てんしょうきん》で有るか無いかは明日出れば分ります、大きに御厄介で有った」
藤「まアお茶を」
武「いえ宜しい、左様なら」
すうっと帰って仕舞いましたから何《なん》だか家主にも薩張《さっぱり》分りません。家主の藤兵衞はあれ程の殿様だから嘘も吐《つ》くまい、併《しか》しよもやあの人が盗賊では有るまい、それにしても何《ど》う云う事であの金が彼《あ》の人の手に這入ったか、と考えて見たが少しも分りません、まさか彼奴《あいつ》が盗賊なら私《わたくし》が泥坊でござると云って奉行所へ出る気遣いは無いが何うしよう。と町代《ちょうだい》の與兵衞《よへえ》という者と相談の上で四ツ時に町奉行の茶屋に詰めて居ります。四ツ半に成っても来ません。
與「藤兵衞さん」
藤「えゝ」
與「何《なん》だかお前の云う事は当《あて》にならねえ、未《ま》だ来やアしねえ、何《な》んだか変だぜ」
藤「だって誠に品格《ひん》の好《よ》い、色白な眉毛の濃い、目のさえ/″\した笑うと愛敬の有る好い男の身丈《せい》のスラリとした」
與「男振や何かは何うでも宜《よ》いが是は来ないぜ」
藤「然《そ》うですな、おやお隣町内の伊勢銀さん何うです」
芳[#「芳」は底本では「若」と誤記]「なに盗賊が這入りまして金を二百両盗まれましたから訴えるんで、宅《うち》は大騒ぎです」
藤「昨夜《
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