ますが、逃げなどは致しません、ズッと出て太い手をついて斯《こ》う拳を握り詰めますると、力瘤《ちからこぶ》というのが腕一ぱいに満ちます、見物《けんぶつ》は今角力と剣術遣との喧嘩が有るというので近村の者まで喧嘩を見に参る、田甫《たんぼ》の処|畦道《あぜみち》に立って伸上って見ている。
 花「先生《しぇんしぇい》此処《こゝ》は天神前で、私《わし》はお前《めえ》さんと喧嘩する事は、斯《こ》うなったからは私は引《ひく》に引かれぬから、お前さん方三人に掛《かゝ》られた其の時は是非が無《ね》え事じゃが、御朱印付の天神様境内で喧嘩してもお前さんも立派な先生、私も角力の端くれ、事訳《ことわけ》知らぬ奴じゃ、天神様の社内を穢《けが》した物を知らぬといわれてはお互に恥じゃ、ねエ死恥《しにはじ》かきたくねえから鳥居の外へ出なせえ」
 是は理の当然で、
 安「うん宜しい、よく覚悟して…鳥居外へ参ろう」
 と三人出たから見物は段々|後《あと》へ退《さが》る、抜刀《ぬきみ》ではどんな人でも退る、豆蔵が水を撒《ま》くのとは違う、怖《おっ》かないからはら/\と人が退《の》きます。
 見物「何《ど》うだ本当に力士てえ者は
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