らんこと、何《なん》だ、え、何《ど》うもその、武士たるべき者の腰に帯《たい》するものを人斬庖丁などゝは以《もっ》ての外《ほか》だ、太平なればこそよいが、若し戦場往来の時是をエヽ、太刀とも唱える、片刀ともいう、今一つ短いのは何《なん》でしたッけ、うむ鎧通しともいう、一事一点間違があれば切腹致すべき尊《とうと》い処の腰の物、それを何《なん》だ無礼至極、どの様に仰しゃっても宜しい」
 惣「重々恐入りましたが何分御勘弁になります事なれば、どの様にお詫を致して宜しいか頓と心得ませんが」
 安「刀を浄《きよ》めて返せ、浄まれば許して遣《つか》わす」
 惣「どの様に致せば浄まります事か、百姓|風情《ふぜい》で何も存じませんで」
 安「知らんという事が有るか、浄めて返さんうちは勘弁|罷《まか》り相成らぬ」
 惣次郎もつく/″\困りましたが、お隅は平素《ふだん》から一角は酒の上が悪く我儘《わがまゝ》なのを知っております、また女が出ると柔《やわら》かになる事も存じているから、却《かえ》って斯《こ》う云う時は女の方が宜《よ》かろうと思って、後《あと》の方からつか/\と進み出まして、
 隅「先生誠に暫く」
 
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