戸締りをしに掛りましたが、
 新「また曇って来たぜ、早く仕ねえ」
 賤「今お待ち」
 と床を敷く間新吉は煙草を喫《の》んでいると、戸外《おもて》の処は細い土手に成って下に生垣《いけがき》が有り、土手下の葮《よし》蘆《あし》が茂っております小溝《こみぞ》の処をバリ/\/\という音。
 新「何《なん》だか音がするぜ」
 賤「お前様《まえさん》は臆病だよ、少し音がすると」
 新「デモ何だかバリ/\」
 賤「なアに犬だよ」
 新「何だか大変にバリ付くよ、何だろう」
 と怖々《こわ/″\》庭を見る途端に、叢雲《むらくも》が断《き》れて月があり/\と照り渡り、映《さ》す月影で見ると、生垣を割って出ましたのは、頭髪《かみ》は乱れて肩に掛り、頭蓋《あたま》は打裂《ぶっさ》けて面部《これ》から肩《これ》へ血だらけになり、素肌へ馬の腹掛を巻付けた形《なり》で、何処《どこ》を何《ど》う助かったか土手の甚藏が庭に出た時は、驚きましたの驚きませんのではござりませぬ、是から悪事露見という処、一寸一息吐きまして。

        五十三

 引続きお聴きに入れました新吉お賤は、我《わが》罪を隠そうが為に、土手の甚
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