居りますから、
累「旦那様お帰り遊ばせ」
新「アヽ眼が覚めたか」
累「はい、貴方此の蚊帳を何《ど》うなさいます」
新「何うするたって暑ッ苦しいよ、今友達を連れて来たが、狭い家《うち》にだゞっ広《ぴろ》い大きな蚊帳を引摺り引廻《ひんまア》して、風が這入らねえのか、暑くって仕様がねえから取るのだ」
累「坊が蚊に螫《く》われて憫然《かわいそう》でございますから、何卒《どうか》それだけはお釣り遊ばして」
新「少し金が入用《いりよう》だからよ、これを持って行って金を借りるんだ、友達の交際《つきあい》で仕様がねえから持って行くよ」
累「はい、それをお持遊ばしては困りますから何卒《どうぞ》お願いで」
新「お願いだって誰がこんな狭い家《うち》へ大きな蚊帳を引摺り引廻《ひんまわ》せと云った、茲《こゝ》は己の家《うち》だ、誰が蚊帳を釣った」
累「はい今日《こんにち》兄が通り掛りまして、手前は憎い奴だが如何にも坊が憫然だ、蚊ッ喰《くい》だらけになるから釣って遣ろうと申して家から取寄せて釣ってくれましたので」
新「それが己の気に入らねえのだ、よ、兄と己は縁が切れて居る、手前《てめえ》は己の
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