変な事ばかりいって、少したじれ[#「たじれ」に傍点]た様子だが、何《な》んだって科《とが》もないお賤を此の鎌で殺すと云う了簡になったのだねえ、確《しっ》かりしないじゃいけないよ」

        九十三

 新「いえ/\決して気は違いません、正気でございますが、お比丘さん、お賤も私《わっち》も斯《こ》う遣って居られない訳があるのでございます、お賤|汝《てめえ》は己を本当の亭主と思ってるが、汝は定めて口惜しいと思うだろうが、汝一人は殺さねえ、汝を殺して置き、己も死なねばならぬ訳があるんだ、汝は知るめえが、あゝ悪い事は出来ねえものだ、此の庵室へ来た時にはお前さんの懴悔話を聞くと若《わけ》え時に小日向服部坂上の深見という旗下へ奉公して、殿の手がついて出来たのがお賤だと仰しゃったが、私《わたし》も其の深見新左衞門の次男に生れ、小さい時に家は改易と成ったので町家《ちょうか》で育ったもの、腹は違えど胤《たね》は一つ、自分の妹とも知らないで七年跡から互に深く成った畜生同様の両人《ふたり》、此の宗觀|様《さん》のお父様《とっさん》は羽生村の名主役で惣右衞門というお方でしたが、お賤を深川から見受けして別に家《うち》を持たせ楽に暮させてお置きなすったものを私は悪い事をするのみならず、申すも恐ろしい事だが、惣右衞門|様《さん》をお賤と私とで縊《くび》り殺したのでございます、さ、斯《こ》う申したら嘸《さぞ》お驚きでございましょう、誰も知った者はありません、病死の積りで葬って仕舞ったが、人は知らずとも此の新吉とお賤の心には能《よう》く知って居りまする、畜生のような兄弟が斯《こ》うやって罪滅しの為夫婦の縁を切って、出家を遂げようと思いました処へ宗觀|様《さん》がおいでなすって、これ/\と話を聞いて見れば迚《とて》も生きては居《お》られません、此の鎌は女房のお累が自害をし、私《わっち》が人を殺《あや》めた草苅鎌だが、廻り廻って私《わっち》の手へ来たのは此の鎌で死ねという神仏《かみほとけ》の懲《こらし》めでございまするから、其のいましめを背かないで自害致しまする、私共《わたくしども》夫婦のものは、あなたの親の敵でございます、嘸《さぞ》悪《にく》い奴と思召《おぼしめし》ましょうから何卒《どうぞ》此の鎌でズタ/\に斬って下さいまし、お詫びの為《た》め一《ひ》と言《こと》申し上げますが、お前《まい》さ
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