も余程|草臥《くたび》れたが、馬へ乗って少し息を吐《つ》いたが、馬へ乗ると又|矢張《やっぱり》腰が痛いのう」
作「旦那誠に御無心だが、私《わし》はね、少し用があるのを忘れて居たが、実は此の先へ往って炭俵を六俵積んで来て呉れと頼まれてるんだが、どうしても積んで往《い》かねばなんねえ事があるだ、誠にお気の毒だが此処《こゝ》で下りて下せえな、もう此処から先は平《たいら》な道だから歩いても造作ねえんですが」
三「それじゃア何《どう》でもいゝ汝《てめえ》が困るなら下りて歩いて往こう」
と云いながら馬から下りる。
作「私《わし》は少し急ぎますから御免なせえ」
と大急ぎで横道の林の蔭へ馬を引込《ひきこ》みました。
八十五
日はどっぷりと暮れ、往来も止《とま》りますと、戸ヶ崎の小僧弁天堂の裏手の草の茂みからごそ/\と葦《あし》を分けながら出て来た新吉は、ものをもいわず突然《いきなり》與助の腰を突きましたから堪《たま》りません、與助は翻筋斗《もんどり》を打って、利根の枝川へどぶんと水音高く逆《さか》とんぼうを打って投げ込まれましたから、アッといって三藏が驚いている後《うしろ》から、新吉が胴金を引抜いて突然《だしぬけ》に三藏の脇腹へ突込《つきこ》みました、アッといって倒れる処へ乗掛り、胸先を抉《えぐ》りましたが、一刀《いっぽん》や二刀《にほん》では容易に死ねません、死物狂い一生懸命に三藏は起上り、新吉の髻《たぶさ》をとって引き倒す、其の内與助は年こそ取って居りまするが、田舎漢《いなかもの》で小力《こぢから》もあるものでございますから、川中から這い上《あが》って参りながら、短いのを引き抜き、
與「此の野郎なにをしやアがる」
と斬って掛る様子を見るよりお賤は驚き、新吉に怪我をさせまいと思い、窃《そっ》と後《うしろ》から出て参り、與助の髻を取って後の方へ引倒すと、何をしやアがるといいながら、手に障った石だか土の塊《かたま》りだか分りません、それを取って突然《いきなり》お賤の顔を打ちました。お賤は顔から火が出た様に思い「アッ」といって倒れると、乗《の》し掛り斬ろうとする処へ、馬子の作藏が與助の傍《わき》から飛び出して、突然《いきなり》足を上げて與助を蹴りましたから堪《たま》りません、與助はウンといって倒れました。新吉は刀を取直して又《ま》た一刀《いっとう》三
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