本も喰えば、後《あと》に銭が残らねえ様な事をするより宜《い》いが、同類になって、若《も》し知れた時は首を打斬《ぶっきら》れるのかよ」
 安「そうよ」
 作「ウーン、それだけだな、己はもうこれで五十を越してるんだから百両で二十両になるのなら、こんな首は打斬られても惜くもねえから行《や》るべえか」
 安「汝《てまえ》馬を引いておれの隠家《かくれが》まで来い、あの明神山の五本杉の中に一本大きな楠《くすのき》がある、其の裏の小山がある処に、少しばかり同類を集めているんだ」
 馬「じゃア彼《あ》のもと三峰山《みつみねさん》のお堂のあった処だね、よくまア彼様《あん》な処にいるねえ、彼処《あすこ》は狼や蟒《うわばみ》が出た処《とこ》なんだから、尤《もっと》も泥坊になれば狼や蟒を怖がっていちゃア出来ねえが、そうかえ」
 一角は懐から金を取出し作藏に渡しながら、
 安「これは汝《てまえ》が同類になった証拠の為、少しだが小遣銭に遣るから取って置け」
 作「え、有難《ありがて》え、これは五両だね、今日は本当に思え掛けねえで五両二分になった」
 安「なぜ」
 作「不思議な事もあるものだ、今日はね、あのもさの三藏に逢ったよ、羽生村の質屋で金かした婆《ば》ア様が死んだって、其の白骨を高野へ納めるてえ来たが、今日は廿一日だから新高野山へお参《めえ》りをするてえので、與助を供に伴《つ》れて、己が先刻《さっき》東福寺まで送ってッたが、昔馴染だから二分くれるッて云ったが、有難うござえやす、実に今日は思え掛けねえ金儲けが出来た」
 安「其の五両を取って見ると、もう同類だから是切り藤ヶ谷へ来ずにいて、若《も》し汝《てまえ》の口から己の悪事を訴人しても汝は矢張《やっぱ》り同罪だ、仮令《たとえ》五両でも貰って見れば同類だから然《そ》う思え」
 作「己も覚悟を極めて行《や》るからには屹度《きっと》遣りやすよ、それは宜《い》いが、あんた直《すぐ》に独りで往《い》くか、馬に乗って往かないか、歩いて往く、そうか、左様なら……あゝ其方《そっち》へ往ってア損だから、其の土橋《どばし》を渡って真直《まっすぐ》においでなせえ、道い悪いから気い付けて往きなさえ、なア安田先生も剣術遣いだから、どうして剣術遣いじゃア飯《まんま》ア喰えねえ、あの人は旧時《もと》から随分|盗賊《どろぼう》ぐれえ遣《や》ったかも知んねえ、今己がに五両呉
前へ 次へ
全260ページ中228ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング