ど》うか止め度《た》いと思うが、敵を討ちに行くてえのだから止められねえッて名残《なごり》イ惜《おし》がってるでがんす、村の者もねえ皆《みんな》御恩になったゞから渡口《わたしぐち》まで送り度《て》えといってますが、あなたそういうから年い取った者ア来ないで好《え》えといって置きましたが、私《わし》だけは戸頭《とがしら》まで送り度《て》えと思って支度ウしました」
母「汝《われ》も送らなえで好《え》いから若《わけ》え者《もん》を止めて呉んろよ、汝が送ると若え者も義理だから戸頭まで送りばいと云って来るだ、そうすりゃア送られると送られる程名残い惜いから、汝も送らなえでも好《え》いよ」
多「だけンどもはア村の者《もん》は兎も角も私《わし》はこれ十四歳の時から御厄介《ごやっけえ》になって居りまして、お前様《めえさん》のお蔭でこれ種々《いろ/\》覚えたり、此の頃じゃアハア手紙の一本|位《ぐれえ》書ける様になったのア前《めえ》の旦那の御厄介《ごやっけえ》でがんすから、お家《うち》がこうなって遠い処《とけ》え行くてえ事《こっ》たら私《わし》も附いて行かないばなんねえが、婆様《ばあさまア》塩梅《あんべい》が悪うござえまして、見棄てちゃアなんねえというから、あなたのお心へ任して送りはしねえが、切《せ》めて戸頭まで送りてえと思って居ります、塚前《つかさき》の彌右衞門《やえもん》どんは死んだかどうか知んねえが、通り道から少し這入《へい》るばかりだから、ちょっくり塚前へも寄ったが宜《え》い」
母「それもどうするかも知んなえが、汝《われ》は送らなえが好《え》いよ」
多「でも戸頭まで送るばいと思って居ります」
母「送らんで宜《え》いというに何故そうだかなア、汝《われ》ア死んだ爺様《とっさま》の時分から随分世話も焼かしたが家《うち》の用も能く働いたから、何《なん》ぞ呉れ度《て》えと思うけれども何も無《な》えだ、是ア惣次郎が居る時分に祝儀不祝儀に着た紋附《もんつき》だ、汝も是《こ》れから己《おら》ア家《うち》が無くなれば一人前の百姓に成るだから、祝儀不祝儀にゃアこういう物も入《い》るから、此の紋附一つくればいと云う訳だよ、それから金も沢山呉れ度《て》えが、茲《こゝ》に金が七両あるだ、是ア少し訳があって己《おら》が手許《てもと》にあるだから是を汝がにくればい、此の紬縞《つむぎじま》ア余《あんま》り
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