窮屈な処にいるのはいやだと思って出たんだが、富さんこうなるのは深い縁だねえ、どうしても夫婦になる深い約束だよ」
富「是は妙なもんだね、不思議なもので、羽生村にいる時から私が真に惚れゝばこそ色々な策をして、惣次郎を討《うた》せたのも皆《みんな》お前故だねえ」
隅「一角さんは何処《どこ》にいるの」
富「一昨日《おととい》の晩三人で来て前の家《うち》は策で売らしてしまったから、笠阿弥陀堂《かさあみだどう》の横手に交遊庵《こうゆうあん》という庵室《あんしつ》がありましょう、二間《ふたま》室《ま》があって、庭も些《ちっ》とあり、林の中で人に知れないからというので其処《そこ》を借りていて、今夜私に様子を見て来いというので、私が来たのだから、こう/\といえば、えゝというので百両出す、なに大丈夫だ、其れで借金を片付けて行って了《しま》やア彼奴《あいつ》は何《なん》ともいえない、人を殺した事を知って居るから何ともいえやアしないから、烟《けぶ》に巻かれてしまわア、追掛《おっか》けようといっても彼奴江戸へ出られる奴でないから大丈夫」
隅「そう、本当に嬉しいねえ、真底お前の了簡が知れたよ」
富「これ程お前を思ってるのに其れを疑ぐるということはない、誠に詰らぬこと…」
隅「此処《こゝ》で寝るといけないから彼方《あっち》へおいでよ、彼方に床が取ってあるから、さ此のお金と書付を」
富「やアそんなもの」
隅「落《おっ》ことすといけないからお出し」
と、金と書付を引《ひっ》たくって、無暗《むやみ》に手を引いて、細廊下の処を連れて行《ゆ》くと、六畳ばかりの小間《こま》がありまして、其処《そこ》に床がちゃんと敷いてある。
隅「さ、お寝と云ったらお寝、あら俯伏《つっぷ》しちゃいけないから仰向けにお成り」
と仰向に寝かし、枕をさして、
隅「さ、寒いから夜具《これ》を」
富「あゝ有難い、こっちイ這入って寝なよ」
隅「今寝るが、寒いから掻巻《かいまき》を」
富「好《い》いよ、雪は何《ど》うしたえ」
隅「なに雪は降っているよ、夫婦の固めに雪が降るのは縁が深いとかいう事があるねえ」
富「うーん、そりゃア深雪《みゆき》というのだ」
隅「富さん、私はいう事があるよ」
富「どう」
隅「あら顔を見られると恥かしいから被《かぶ》っておいでよ」
とお隅は掻巻を富五郎の目の上まで被せて其
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