、
富「しめた、金で自由になる枕附きで出れば、望みは十分だ」
と天命とはいいながら、富五郎が浮々《うか/\》とお隅の処へ遊びに参るという、これから仇打《あだうち》になりまするが、一寸一息。
七十一
お隅は霜月の八日から披露《ひろめ》を致しまして、客を取る様になりました。なれどもお隅は貞心《ていしん》な者でございますから、能《い》いように切り脱《ぬ》けては客と一つ寝をする様なことは致しません、素《もと》より器量は好《よ》し、様子は好し、其の上世辞がありまするので、大して客がござります。丁度十二月十六日ちら/\雪の降る日に山倉富五郎が遣《や》って参りましたが、客が多いので何時《いつ》まで待ってもお隅が来ません、其の内に追々と夜《よ》が更けて来ますが、お隅は外の客で来ることが出来ませぬから、代りの女が時々来ては酌をして参り、其の間には手酌で飲みましたから、余程酒の廻っている処へ、隔《へだて》の襖《ふすま》を明けて這入った人の扮装《なり》はじゃがらっぽい[#「じゃがらっぽい」に傍点]縞《しま》の小袖にて、まア其の頃は御召縮緬《おめしちりめん》が相場で、頭髪《あたま》は達磨返しに、一寸した玉の附いた簪《かんざし》を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》し散斑《ばらふ》の斑《ふ》のきれた櫛《くし》を横の方へよけて※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]しており、襟には濃《こっ》くり白粉《おしろい》を附け、顔は薄化粧の処へ、酒の相手でほんのりと桜色になっております、帯がじだらく[#「じだらく」に傍点]になりましたから白縮緬の湯巻がちら/\見えるという、前《ぜん》とはすっぱり違った拵《こしら》えで、
隅「富さん」
富「イヤこれはどうも、どうも是は」
隅「私ゃアね富さんじゃないかと思って、内々《ない/\》見世で斯《こ》う/\いう人じゃアないかというと然《そ》うだというから、早く来度《きた》いと思うけれども、長ッ尻《ちり》のお客でねえ、今やっと脱《ぬ》けて来たの、本当に能く来たね」
富「これはどうも、甚《はなは》だ何《ど》うも御無沙汰を、実は其の不慮の災難で御疑念を蒙むりました、それ故お宅へ参ることも出来ない、こんな詰らぬ事はないと存じて、存じながら御無沙汰を、只今まで重々御恩にな
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