てやれ」
多「さア持ってけ、此の阿魔ア、これエ打てねえ奴だ」
隅「持ってかなくってどうするものか」
とお隅は離縁状を開《ひら》いて見まして、苦笑《にがわら》いをして懐へ入れ、
隅「有難い、アヽこれでさっぱりした」
多「ア、さっぱりしたと云やアがる、どうも悪《にく》い口い敲きやアがるなア此の阿魔」
隅「なんだねえ、ぎゃア/\おいいでない、長々御厄介様になりました、お寒さの時分ですから随分御機嫌よう」
多「えゝぐず/\云わずにサッサと早く行かなえかい」
隅「行かなくって何《ど》うするものか、縁の切れた処にいろっても居やアしない」
と悪口《あっこう》をいいながらつか/\と台所へ出て来ますと、惣吉は取って十歳、田舎育ちでも名主の息子でございますから、何処《どこ》か人品《じんぴん》が違います、可愛がってくれたから真実の姉の様に思っておりますから、前へ廻ってピッタリ袂《たもと》に縋《すが》って、
惣「姉様ア、お母《っか》アが悪ければ己があやまるから居てくんなよ、多助があんなこと云っても、あれは誰がにもいう男だから、己があやまるから、姉《あね》さん居てくんなえ、困るからヨウ」
隅「何《な》んだい、其方《そっち》へお出でよ、うるさいからお出でよ、袂へ取ッつかまって仕ようが無いヨウ、其方へお出でッたらお出でよ」
多「惣吉さん、此方《こっち》へお出でなさえ、今迄|坊《ぼう》ちゃんを可愛がったなア、世辞で可愛がった狸阿魔だから、側へ行かないが好《え》え」
母「惣吉や、此処《こけ》え来《こ》う、幾ら縋っても皆《みんな》世辞で可愛がったでえ、心にもない世辞イいって汝《われ》がを可愛がる振《ふり》いしたゞ、それでも子供心に優しくされりゃア、真実姉と思って己があやまるから居てくんろというだ、其処《そけ》えらを考えたって中々出て行かれる訳のものでアなえ、呆れた阿魔だ、惣吉|此処《こけ》え来い」
多「此方《こっち》いお出でなさえ、坊《ぼう》ちゃん駄目だから」
隅「来いというから彼方《あっち》へお出でよ、今までお前を可愛がったのもね、お母《っか》さんのいう通り拠《よんどころ》なく兄弟の義理を結んだからお世辞に可愛がったので、皆《みんな》本当に可愛がったのじゃアないよ、彼方へお出で、行っておくれ、行かないか」
多「あれ坊《ぼ》っちゃんを突き飛《とば》しやアがる、惣吉さんお
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