いたずら》アするなア」
 甚「悪《わり》いたって己がしたのじゃアねえ、自然《ひとりで》に出たのだ新吉|咽喉頸《のどっくび》に筋が出て居るな、此の筋を見や」
 新「エ、筋が有ったっても構わねえ、水を掛けて早く埋めよう、おい早く納めよう」
 甚[#「甚」は底本では「新」]「納められるもんかえ、やい、是《こ》りゃア旦那は病気で死んだのじゃアねえ変死だ、咽喉頸に筋があり、鼻血が出れば何奴《どいつ》か縊《くび》り殺した奴が有るに違《ちげ》えねえ」
 新「何《なん》だ人聴《ひとぎき》が悪《わり》いや、大きな声をしなさんな、仏様の為にならねえ」
 甚「手前《てめえ》も己も旦那には御恩があらア、其の旦那の変死を此の儘に埋めちゃア済まねえ、誰《たれ》か此の村に居る奴が殺したに違《ちげ》えねえから、敵《かたき》を捜して、手前も己も旦那の敵を取って恩返《おんげえ》しを仕なけりゃア済まねえ、代官へでも何処《どこ》へでも引張《ひっぱ》って行くのだ、本堂に若旦那が居るから若旦那に一寸《ちょいと》と云って呼んで……」
 新「何《なん》だな其様《そん》な事をして兄い困るよ、藪を突付《つっつ》いて蛇を出す様な事をいっちゃア困らアな、今お経を誦《あ》げてるから、エーおい兄い、それはそれにして埋めて仕舞おう」
 甚「埋められるもんかえ、それとも新吉、実は兄い私《わっち》が殺したんだと一言《ひとこと》云やア黙って埋めて遣ろう」
 新「何を詰らねえ事を、な何を、思い掛けねえ事をいうじゃアねえか何《なん》だって旦那を」
 甚「手前《てめえ》が殺したんでなけりゃア外《ほか》に敵が有るのだから敵討をしようじゃアねえか、手前お賤と疾《と》うから深《ふけ》え中で逢引するなア種が上って居るが、手前は度胸がなくっても彼《あ》の女《あま》ア度胸が宜《いい》から殺してくれエといい兼ねゝえ、キュウと遣ったな」
 新「何《ど》うも、な何《なん》だってそれは、何うも、エおい兄《あんに》い外の事と違って大恩人だもの、何ういう訳で思い違《ちげ》えて其様《そん》な事を、え、おい兄《あんに》い」
 甚「何をいやアがるのだ、手前《てめえ》が殺さなけりゃア殺さねえで宜《い》いやア、手前と己は兄弟分の誼《よしみ》が有るから打明けて殺したと云やア黙って口を拭《ふ》いて埋めるが、外に敵が有れば敵討だ、マア仏様を本堂へ持って行こう」
 新「これドヽ何
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