《でえじょうぶ》だ人子《ひとっこ》一人通らねえ土手下の一軒家田や畑で懸隔《かけへだ》って誰も通りゃアしねえから心配《しんぺえ》ねえよ」
賤「いゝよ、私はまた作さんの酔ったのは可笑しいよ余念が無くって、お前さん慾の無い人だよ」
作「慾が無《ね》い事《こた》アねえ、是で慾張って居るだが、何方《どっち》かというと足癖の悪《わり》い馬ア曳張《ひっぱ》って、下り坂を歩くより、兄いと二人で此処《こけ》え来て、斯う遣って酔って居れば好《い》いからね、先刻《さっき》は己《おら》ア酔《えい》が醒めたね」
新「止せえ、先刻の話は止せよ」
作「止せたってお賤さん、お前《めえ》マア新吉さんは可愛いゝ人だと思って居るから、首尾して、他人《ひと》にも知んねえように白《しら》ばっくれて寄せるけれども、新吉さんが此処《こけ》え来るってえ心配《しんぺえ》は是《こ》りア己《おれ》が魂消《たまげ》た事がある、今日ね」
新「そんな詰らねえ事をいうな手前《てめえ》は酔うとお喋《しゃべ》りをしていけねえ」
作「お喋りったって、一杯《いっぺえ》飲んで図に乗っていうのだ、エヽ、おい、それでねえ、マア一杯飲んで帰《けえ》った処が、銭イなえと云うから、無くったって好《い》いや、何《なん》でもお賤さんの処《とこ》へ行ってお呉んなせえというと、いつも行って馳走になって小遣《こづけえ》貰って帰《けえ》るべえ能でもねえじゃアねえか、何卒《どうか》己も偶《たま》にア旨《うめ》え物でも買って行って、お賤に食わしてえって、其処《そこ》はソレ情合《じょうあい》だからそんな事を云ったゞが、いゝや旨え物持って行くたって無《ね》えものはハア駄目だ、お賤さんの方が、旨え物|拵《こし》れえて待って居るから今夜呼んで来てくんなせえよと、己が頼まれたから構わねえじゃアねえかと云っても、金が無ければてえので家《うち》へ帰《けえ》ると、家に蚊帳が釣って有るだ」
新「よせ/\、そんな話は止せよ」
作「話したって宜《よ》かんべえ、それで其の蚊帳《かやア》質屋へ持って行こうって取りに掛ると、女房《かみさん》は塩梅《あんべえ》が悪《わり》いし赤ん坊は寝て居るし」
新「コレよせ、よさねえか」
作「云ったって宜《え》え、そんなに小言云わねえが宜え、蚊帳へ縋《すが》り付いて、己《おら》ア宜えが子供が蚊に喰われて憫然《かわいそう》だから何卒《どう
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