る》へしなせえってコウ引立《ひきた》って居てズンと下《おろ》すから、虎子で臀《しり》を打《ぶ》つので痛《いて》えやな、あゝ人情がねえからな」
 新「其様な事を云うもんじゃアねえ、何《なん》でもお前の好きな物を食べるが宜《い》い」
 勘「有難《ありがて》え、もうねえ、新吉が来たから長屋の衆は帰《けえ》ってくれ」
 新「其様な事を云うもんじゃアねえ」
 長屋の者「じゃア、マア新吉さんが来たからお暇致します、左様なら」
 新「左様ですか、何《ど》うも有難うございます、お金さん有難うお婆さん有難う、ヘエ大丈夫で、又何うか願います、ヘエ、なにお締めなさらんでも宜《よろ》しゅう、伯父さん長屋の人がねエ、親切にしてくれるのに、彼様《あん》な事を云うと心持を悪くするといかねえよ」
 勘「ナアニ心持を悪くしたって構うものか、己《おら》の頑固《いっこく》は知って居るしなあ、能《よ》く来た、一昨日《おとゝい》から逢いたくって/\堪《たま》らねえ、何卒《どうぞ》して逢いてえと思って、もう逢えば死んでも宜《い》いやア、もう死んでも宜い」
 新「其様な事を云わずに確《しっ》かりして、よう、もう一遍丈夫になって駕籠にでも乗せて田舎へ連れて行って、暢気《のんき》な処へ隠居さしてえと思うのだ、随分寿命も延々《のび/″\》するから彼方《あっち》へお引込《ひっこ》みよう」
 勘「独身《ひとりみ》で煙草を刻《きざ》んで居るも、骨が折れてもう出来ねえ、アヽ、お前《めえ》嫁に子供《あかんぼう》が出来たてえが、男か女か」
 新「何《なん》だか知れねえ是から生れるのだ」
 勘「初めては女の児《こ》が宜い、お前《めえ》の顔を見たら形見《かたみ》を遣《や》ろうと思ってねえ、己《おれ》は枕元へ出したり引込《ひっこ》ましたりして、他人《ひと》に見られねえ様に布団の間へ※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]込《さしこ》んだり、種々《いろ/\》な事をして見付からねえように、懐で手拭で包《くる》んだりして居た」
 新「まだ/\大丈夫だよ伯父さん、だけれども形見は生きているうち貰って置く方が宜い、形見だって何をお前がくれるのだか知れねえが、何《なん》だい、大事にして持つよ」
 勘「是を見てくんねえ」
 と布団の間から漸《ようや》く引摺出《ひきずりだ》したは汚れた風呂敷包。
 勘「これだ」
 新「
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