喰付かれますゆえ、仕方なく、
三「詰らぬ口を利かぬが宜《い》いぜ、金は遣《や》るから辛抱をしねえよ」
とただ取られると知りながら、二十両の金を遣りまして甚藏を帰しますと、其の夜《よ》三藏の妹お累《るい》が寝て居ります座敷へ、二尺余りもある蛇が出ました。九月|中旬《なかば》になりましては田舎でも余り蛇は出ぬものでございますが、二度程出ましたので、墓場で驚きましたから何が出ても蛇と思い只今申す神経病、
累「アレー」
と駈出して逃《にげ》る途端|母親《おふくろ》が止め様とした機《はずみ》、田舎では大きな囲炉裏が切ってあります、上からは自在が掛って薬鑵《やかん》の湯が沸《たぎ》って居た処へ双《もろ》に反《かえ》りまして、片面《これ》から肩《これ》へ熱湯を浴びました。
三十
お累が熱湯を浴びましたので、家中《うちじゅう》大騒ぎで、医者を呼びまして種々《いろ/\》と手当を致しましたが何《ど》うしてもいかんもので、火傷《やけど》の痕《あと》が出来ました。追々全快も致しましょうが、二十一二になる色盛《いろざかり》の娘、顔にポツリと腫物《できもの》が出来ましても、何うしたら宜《よ》かろうなどと大騒ぎを致すものでございますのに、お累は半面紫色に黒み掛りました上、片鬢《かたびん》兀《はげ》るようになりましたから、当人は素《もと》より母親《おふくろ》も心配して居ります。
累「あゝ情《なさけ》ない、この顔では此の間法蔵寺で逢った新吉さんにもう再び逢う事も出来ぬ」
と思いますと是が気病《きやみ》になり、食も進まず、奥へ引籠《ひきこも》ったきり出ません、母親《おふくろ》は心配するが、兄三藏は中々分った人でございますから、
三「お母様《っかさん》、えーお累は何様《どん》な塩梅でございますねえ」
母「はアただ胸が支《つか》えて飯が喰えねえって幾ら勧めても喰えねえ/\と云う、疲れるといかねえから些《ちっ》と食ったら宜《よ》かんべえと勧めるが、涙ア翻《こぼ》して己《おら》ア此様《こん》な顔に成ったから駄目だ、何《ど》うせ此様な顔になった位《くれ》えなら、おッ死《ち》んだ方が宜《え》え。と其様《そん》な事べえ云ってハア手におえねえのサ、もっと大《でけ》え負傷《けが》アして片輪になる者さえあるだに、左様《そう》心配《しんぺえ》しねえが宜《え》えと云うが、彼《あれ》は幼《
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