すめごさん》の御墓所《ごぼしょ》でございますか」
 下女「御墓所てえ何《なん》だか」
 新「このお墓は」
 下女「ヘエ此の間川端で殺されたお久さんと云うのを葬った墓場で」
 新「ヘエ左様で、私にお花を上げさして拝まして下さいませんか」
 下女「お前様《まえさま》知って居る人か」
 新「イヽエ無尽の呪咀《まじない》に樒《しきみ》の葉を三枚盗むと当るので」
 下女「そう云う鬮引《くじびき》が当るのか、沢山花ア上げて下さえ」
 新「ヘエ/\有難う、戒名は分りませんが、あとでお寺様で承りましょう、大きに有難う」
 と、ヒョイと後《あと》へ下《さが》りそうにすると、娘が側に立って居りまして、ジロリと横目で見ると、新吉は二十二でも小造《こづく》りの性《たち》で、色白の可愛気のある何処《どこ》となく好《い》い男、悪縁とは云いながら、此の娘も、何《ど》うしてこんな片田舎にこんな好い男が来たろうと思うと、恥かしくなりましたから、顔を横にしながら横眼で見る。新吉も美《い》い女だと思って立止って見て居りました。

        二十八

 新「もしお嬢さん、このお墓へお葬りになりました仏様の貴方はお身内でございますかえ」
 娘「はい私《わたくし》の身寄でございます」
 新「ヘエ道理でよく似ていらっしゃると思いました、イエ何、あのよく似たこともあるもので、江戸にも此様《こんな》事が有りましたから」
 下女「あんた、何処《どこ》に居るお方だい」
 新「私はあの直《じ》き近処《きんじょ》の者でげす、ヘエ土手の少し変な処《とこ》に一寸《ちょっと》這入って居ります」
 下女「土手の変な処《とこ》てえ蒲鉾小屋《かまぼこごや》かえ」
 新「乞食ではございません、其処《そこ》に懇意な者が有って厄介になって居るので」
 下女「そうかネ、それだら些《ちっ》と遊びにお出でなさえ、直《じ》き此の先の三藏と云うと知れますよ、質屋の三藏てえば直き知れやす」
 娘は頻《しき》りに新吉の顔を横眼で見惚《みと》れて居ると、何《ど》う云う事でございますか、お久の墓場の樒の※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]して有る間から一匹出ました蛇の、長さ彼《か》れ是《こ》れ三尺《さんじゃく》ばかりもあるくちなわ[#「くちなわ」に傍点]が、鎌首を立てゝズーッと娘の足元まで這って来た時は、田舎に馴れま
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