瞞《だま》して銭を借《かり》る事は上手だが、大《で》けえ声では云えねえが、此処《こゝ》な甚藏は蝮野郎《まむしやろう》でよくねえ怖《おっ》かねえ野郎でのう」
 太「今日は大分《だいぶ》婆《ば》ア様が通るが何処《どこ》へ行くだ」
 農夫「三藏どんの処《とこ》で法事があるで、此間《こねえだ》此処《こゝ》に女が殺されて川へ投《ほう》り込まれて有って、引揚げて見たら、守《まもり》の中に名前書《なめえがき》が這入《へえ》って居たので、段々調べたら三藏どんが家《うち》の姪《めい》に当る女子《おんなこ》で、母様《かゝさま》が継母《まゝはゝ》で、苛《いじ》められて居られなくって尋ねて来ただが、些《ちっ》とは小遣《こづかい》も持って居ただが、泥坊が附いて来て突落《つきおと》して逃げたと云う訳で、三藏どんは親切な人で、引揚げて届ける所へ届けて、漸《ようや》く事済んで、葬りも済んで、今日は七日《なぬか》でお寺様へ婆ア様達を聘《ほじ》って御馳走するてえので、久し振で米の飯が食えると云って悦んで往《い》きやしッけ、法蔵寺《ほうぞうじ》様へ葬りに成っただ」
 太「然《そ》うか、それで婆ア様ア悦んで行くのだ、久しく尋ねねえだが秋口は用が多えで此の間買った馬は二両五粒だが、高《たけ》え馬だ、見毛《みけ》は宜《い》いが、何《ど》うも膝頭《ひざっこ》突く馬で下り坂は危ねえの、嚏《くしゃみ》ばかりして屁《へ》ベエたれ通しで肉おっぴり出す程だによ、婆ア様に宜しく云って下せえ、左様だら」
 新吉は内で此の話を聞いて居りましたが、お久を葬むったと云うから参詣《さんけい》しなければ悪いと思い、
 新「もし/\」
 農「あゝ魂消《たまげ》た、何処《どこ》から出ただ」
 新「私《わたし》は此処《こゝ》に居《い》るので」
 農「誰《たれ》も居ねえと思ったが何《なん》だか」
 新「只今お聞き申しましたが土手の脇で殺されました女の死骸は、何《なん》と云うお寺へ葬りになりました、三藏さんてえお方が追福《ついふく》なさると聞きましたが、何と云うお寺へ葬りましたか」
 農「法蔵寺様てえ寺で、累《かさね》の葬ってある寺と聞けば直《じき》に知れます」
 新「ヘエー成程」
 農「何《なん》だね、なに其様《そん》な事を聞くのか」
 新「私は無尽《むじん》のまじないに、なにそう云う仏様に線香を上げると無尽が当ると云うので、ヘエ有難う存じま
前へ 次へ
全260ページ中72ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング