女は七人まで取殺すと云う書置がありましたので」
 甚「ふうん執念深《しゅうねんぶけ》え女だな、成程ふうん」
 新「それで、師匠が亡《なく》なりましたから、お久と云う土手で殺した娘が、連れて逃げてくれと云い、伯父が羽生村に居るから伯父を尋ねて世帯《しょたい》を持とうと云うので、それなら田舎へ行って、倶《とも》に夫婦になろうと云う約束で出て参ったので」
 甚「出て来てそれから」
 新「先刻《さっき》彼処《あすこ》へ掛ると雨は降出します、土手を下りるにも、鼻を撮《つま》まれるも知れません真の闇で、すると、お久の眼の下へポツリと腫物《できもの》みたような物が出来たかと思うと、見て居るうちに急に腫れ上りましてねえ、ヘエ、貴方死んだ師匠の通りの顔になりまして、膝に手を付きまして私《わたくし》の顔をじいッと見詰めて居ました時は私は慄《ぞ》っと致しましたので、ヘエ怖い一生懸命に私が斯《こ》う鎌で殺す気も何《なんに》もなく殺してしまって見ると、其様《そん》な顔でも何《なん》でもないので、私がしょっちゅう師匠の事ばかり夢に見るくらいでございますから、顔が眼に付いて居るので、殺す気もなくお久と云う娘を殺しましたが、綺麗な顔の娘が然《そ》う云うように見えたので、見えたから師匠が化けたと思って、鎌でやったので、ヘエ、やっぱり死んだ豊志賀が祟《たゝ》って居りますので、七人まで取殺すと云うのだから私の手をもって殺さしたと思うと、実に身の毛がよだちまして、怖かったの何《なん》のと、其の時お前さんが来て泥坊、と襟首を掴んだから一生懸命に身を振払って逃げ、まア宜《い》いと思うと、一軒家《いっけんや》が有ったから来たら、やっぱり貴方の家《うち》へ来たから、泡をくったのでねえ」
 甚「ふうんそれじゃア其の師匠は手前《てめえ》に惚れて、狂死《くるいじに》に死んで、外《ほか》の女を女房にすれば取殺すと云う書置の通り祟って居るのだな」
 新「祟って居るったって私《わたくし》の身体は幽霊が離れないのでヘエ」
 甚「気味《きび》の悪い奴が飛込んで来たな、薄気味《うすきび》の悪い、鎌を手前《てめえ》が持って居るから悪《わり》いのだ」
 新「鎌も其処《そこ》に落ちて有ったので、其処へお久が転んだので、膝の処へ少し疵《きず》が付き、介抱して居るうち然《そ》う見えたので、それで無茶苦茶にやったので、拾った鎌です」
 甚「そ
前へ 次へ
全260ページ中70ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング