其の手を取って逆に捻《ねじ》ると、ズル/\ズデンと滑って転げると云う騒ぎで、二人とも泥ぼっけになると、三町ばかり先へ落雷でガラ/\/\/\/\ビューと火の棒の様なる物が下《さが》ると、丁度|浄禅寺《じょうぜんじ》ヶ淵辺りへピシーリと落雷、其の響《ひゞき》に驚いて、土手の甚藏は、体《なり》は大兵《だいひょう》で度胸も好《い》い男だが、虫が嫌うと見え、落雷に驚いてボサッカの中へ倒れました。すると新吉は雷よりも甚藏が怖いから、此の間《ま》に包を抱えて土手へ這上《はいあが》り、無茶苦茶に何処《どこ》を何《ど》う逃げたか覚え無しに、畑の中や堤《どて》を越して無法に逃げて行《ゆ》く、と一軒|茅葺《かやぶき》の家の中で焚物《たきもの》をすると見え、戸外《おもて》へ火光《あかり》が映《さ》すから、何卒《どうぞ》助けて呉れと叩き起しましたが、其の家《うち》は土手の甚藏の家《うち》、間抜な奴で、新吉再び土手の甚藏に取って押えられると云う。是から追々《おい/\》怪談になりますが、一寸一息つきまして。

        二十四

 一席引続きましてお聞《きゝ》に入れますは、累が淵のお話でございます。新吉は土手の甚藏に引留められ、既に危《あやう》い処へ、浄禅寺ヶ淵へ落雷した音に驚き、甚藏が手を放したのを幸い、其の紛れに逃延びましたが、何分《なにぶん》にも初めて参った田舎道、勝手を心得ませんから、たゞ畑の中でも田の中でも、無茶苦茶に泥だらけになって逃げ出しまして、土手伝いでなだれを下《お》り、鼻を撮《つま》まれるも知れません二十七日の晩でございますが、透《すか》して見ると一軒茅葺屋根の棟《むね》が見えましたから、是は好《い》い塩梅だ、此処《こゝ》に人家があったと云うので、駈下りて覗くと、チラ/\焚火《たきび》の明《あかり》が見えます。
 新「ヘエ、御免なさい/\、少し御免なさい、お願いでございます」
 男「誰だか」
 新「ヘイ、私《わたくし》は江戸の者でございますが、御当地へ参りまして、此の大雨に雷鳴《かみなり》で、誠に道も分りませんで難儀を致しますが、少しの間お置きなすって下さる訳には参りますまいか、雨の晴れます間でげすがナ」
 男「ハア大雨に雷鳴で困るてえ、それだら明けて這入りなせい、明《あけ》る戸だに」
 新「ヘエ左様でげすか、御免なさい、慌《あわ》てゝ居りますから戸が隙《す》いて居りま
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