のは弁天《べんてん》でせう。甲「まア富貴楼《ふつきらう》のお倉《くら》さんかね、福分《ふくぶん》もあり、若い時には弁天《べんてん》と云《い》はれた位《くらゐ》の別嬪《べつぴん》であつたとさ、宅《たく》は横浜《よこはま》の尾上町《をのへちやう》です、弁天通《べんてんどほ》りと羽衣町《はごろもちやう》に近《ちか》いから、それに故人《こじん》の御亭主《ごていしゆ》は亀《かめ》さんと云《い》ふからさ。乙「だツて紳士程《しんしほど》金満家《きんまんか》にもせよ、実《じつ》は弁天《べんてん》も男子《だんし》に見立《みたて》たいのさ。と云《い》つて居《ゐ》ると背後《うしろ》の襖《ふすま》を開《あ》けて。浅「僕《ぼく》が弁天《べんてん》です、僕《ぼく》が弁天《べんてん》さ。甲「おや貴方《あなた》は浅田正文君《あさだせいぶんくん》ではありませんか、シテ貴方《あなた》が何《ど》ういふ理由《わけ》で。浅田「ハテ僕《ぼく》は池《いけ》の端《はた》に居《ゐ》るからぢや。



底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
   2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻
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