、酒《さけ》を一|杯《ぱい》出《だ》せといふゆゑ、一|合《がふ》附《つ》けて出《だ》しますると、湯呑《ゆのみ》で半分も飲《の》まない内《うち》に、渋《しぶ》い面《つら》をして、是《これ》までに斯《こ》んな渋《しぶ》い酒《さけ》は飲《の》んだ事がないといひましたから、夫《それ》を又《また》他《わき》へ行《い》つて云《い》はれるとね、私《わたし》の処《ところ》の商売《しやうばい》に障《さは》るから、他《わき》へやらねえやうに棒縛《ぼうしば》りにしたんでございます。僧「是《これ》は怪《け》しからん事をするものだな、どうか勘忍《かんにん》してやつて呉《く》れまいか。亭「いや勘忍《かんにん》出来《でき》ません、彼《あ》れを助《たす》けると外《ほか》へ行《い》つて喋舌《しやべ》るからいけません……お燗《かん》が附《つ》きましたよ。僧「ハイ/\是《これ》が猪口《ちよく》かい、大分《だいぶ》大きな物だね、アヽ宜《い》い工合《ぐあひ》についたね。グーツと一|口《くち》飲《の》むか飲《の》まん内《うち》に旅僧《たびそう》が渋《しぶ》い顔して、僧「アツ……御亭主《ごていしゆ》、序《ついで》に愚僧《ぐそう》も縛《しば》つてお呉《く》れ。



底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
   2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫
   1964(昭和39)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年6月19日作成
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