りましたが、がみがみと小言を申したりなんかすると間違いでも仕出来《しでか》さんに限らないと、物に馴れておいでなさるお方でげすから、態《わざ》と言葉づかいも和《やわ》らかに、
 晋「お若、なんだ片付けものを始めたのか、ハヽヽヽヽ如何《いか》に世捨人になっても女というものは、矢っ張りそんな事をいたしておるか、こんだは大分《だいぶ》頭《つむり》も生えたようだな」
 お若は伯父の底気味わるい言葉にハッと思って胸はおどりましたが、覚《さと》られまいと態と何気なく
 若「昨日《きのう》から剃《す》りましょうと思ってるんですけれど、何《なん》だか風邪気のようですから、本当《ほんと》に汚ならしくなったでしょう」
 晋「感冐《かぜ》をひいたか、そりゃ大切《だいじ》にしないと宜しくないよ、感冐は万病の原《もと》と申すからの」
 若「はい有難うございます」
 晋「今日はの些《ちっ》とお前に相談することがあって来たのだから、まア此処《こゝ》へ来なさい」
 と申されていよ/\心配でなりません。さては勝五郎が喋ったにちがいない、こんなことゝ知ったなら伊之さんと直ぐ駈落をしたもの、まさか伯父さんに言付けはしまいと思
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