な風をして行くも何《なん》だか極りが悪いけれど、外に頼るものがないんだからねえ」
伊「ナニさ、心配しなさることはないよ、爺い婆アの二人暮しでいるんだから、私《わし》が頼めば一時《いちじ》は小言をいうかも知れないが、憎いとは思うまいから何うにか世話をしてくれるよ」
若「そうかねえ、それでは其処《そこ》へ行《ゆ》くことに仕ましょうが、今から直ぐ二人で此処《こゝ》を出ては人目にかゝってよくないがね、何うしょう」
伊「昼日中《ひるひなか》二人で出てはいけない、今夜の仕舞汽車で間にあうように、そして横浜まで落延びておいて、明朝《あす》一緒に往《ゆ》こう」
若「あゝ、だけれど先方《さき》で嘸《さ》ぞ恟《びっく》りするだろうね、まアお前さん何《なん》てッて往くつもりなの」
伊「ハヽヽヽヽ詰らぬ心配したって仕方がないよ、外に何《なん》とも言方《いいかた》がないじゃアないか、矢ッ張り駈落をして来たというより仕様がないのさ」
若「ホヽヽヽヽ何《なん》だか極りが悪くって」
と相談は極りましたから、それでは今夜と伊之助は分れて根岸を出てまいります。お若さんは今夜駈落を為《し》ようというんですから
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