ゥたじけ》のう存じます」
 船「お前《めえ》らが連《つれ》の死んだ人ア何《ど》うすべえ」
 文「ほんに心付かなかった、只今まで船の中で死んだ者は何ういう扱いを致すものでしょう」
 船「陸《おか》が近けりゃア伝馬《てんま》へ積んで陸へ埋《うめ》るだが、何処《どこ》だか知んねえ海中じゃア石ウ付けて海へ打投《ぶっぽ》り込むだ」
 文「左様ですか、永く置いては船の汚《けが》れ、此の儘|何《ど》うぞ」
 船「おゝ合点《がってん》だ、客人|成仏《じょうぶつ》さっせえ、それ/\江戸の客人危ねえぞ」
 文「はい、有難う存じます、南無阿弥陀仏/\」
 さて文治は船頭の介抱にて身体も以前に復し、それ/″\金を出して礼をいたし、日を経て無事に新潟沖へ着船いたしまして、伝馬で陸《おか》へ上《あが》り、一同無事を祝して別れを告げました。これより文治は彼方《あなた》此方《こなた》と尋ね廻りまして、漸《ようや》く此の前泊りました旅籠屋《はたごや》へまいりました。
 文「はい、御免下さい」
 女「入っしゃいまし」
 文「一昨年中はいろ/\お世話になりました」
 と云われて主人は暫く文治の顔を見詰めて居りましたが、漸く思い付いたと見えまして、
 主「やア旦那様、よくまア……ほんにマア宜《よ》く御無事でお帰りなさいましたなア、何《ど》うして助かりやしたえ、あの時|私《わし》があれ程お前様《めえさま》に、ありゃア海賊の手下だと申しやしたのに、何《なん》でもお前様ア見物に往《い》くだってお出でなさりやしたが、それきりお帰りが無《ね》えから、いくらお侍でも殺されたんべえと思っていやしたが、宜くまア帰ってござらしった、お目出度《めでと》う存じます」
 文「いや、あの二人の舟人と親船までまいらぬ内に難船してな」
 主「へえー難船しなすったかえ」
 文「どうせ魚の餌食《えじき》と覚悟して船の漂うまゝに任したのが、却《かえ》って幸いとなって無人島《むにんとう》へ着きましてな」
 主「へえ、無人島、それから何《ど》うしなすった」
 文「いやはや無人島でさん/″\難儀いたしました」
 主「まア、そりゃア飛んだ事でござりやした、お同伴の船頭二人は何《ど》う為《な》せえましたね」
 文「お前のいう通りあの二人も海賊の手下であった」
 主「それ御覧なせえ、それだから私《わし》があんなに止めたのに到頭《とうとう》強情をお張りな
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