があります、未《ま》だ壮《さか》んな宗達和尚、お竹の器量と云い、不断の心懸《こゝろがけ》といい、実に惚れ/″\するような女、其の上侍の娘ゆえ中々|凛々《りゝ》しい気象なれども、また柔《やさ》しい処のあるは真に是が本当の女で、斯《か》かる娘は容易に無いと疾《とう》から惚込んで、看病をする内にも度々《たび/\》起る煩悩を断切り/\公案をしては此の念を払って居りましたが、今は迷《まよい》の道に踏入《ふみい》って、我ながら魔界へ落ちたと、ぐっとお竹を□□[#底本2字伏字]める途端に、温《あたゝか》みでふと気が附いたお竹が、眼を開《あ》いて見ますと、力に思う宗達和尚が、常にもない不行跡《ふぎょうせき》、髭《ひげ》だらけの頬《ほお》を我が顔へ当てゝ、肌を開いて□□[#底本2字伏字]めて居りますから、驚いて、
竹「アレー、何を遊ばします」
 と宗達和尚を突退《つきの》けて向うへ駆出しにかゝる袖を確《しっ》かり押えて、
宗「お竹さん御道理《ごもっとも》じゃ、どうも迷うた、もうとても出家は遂げられん、私《わし》はお前の看病をして枕元に附添い、次の間に寐《ね》ていても、此の程はお前の身体《からだ》が利かんによって、便所へ行《ゆ》くにも手を引いて連れて行き、足や腰を撫《なで》てあげると云うのも、実は私が迷いを起したからじゃ、とても此の煩悩が起きては私は出家が遂げられん、真に私はお前に惚れた、□□□□[#底本4字伏字]私の云う事を肯《き》いてくだされば、衣も棄て珠数《じゅず》を切り、生えかゝった月代《さかやき》を幸いに一つ竈《べッつい》とやらに前を剃《そり》こぼって、お前の供をして美作国《みまさかのくに》まで送って上げ、敵《かたき》を討つような話も聞いたが、何《ど》の様《よう》な事か理由《わけ》は知らんが、助太刀も仕ようし、又何の様な事でも御舎弟と倶《とも》に力を添える、誠に面目ない恥入った次第じゃが、何うぞ私の言う事を肯いてくだされ」
 と云われ、呆れてお竹は宗達の顔を見ますと、宗達の顔色は変り、眼の色も変り、少し狂気している容子《ようす》で、掴《つか》み付きにかゝるのを突退《つきの》けて、お竹は腹立紛れに懐へ手を入れて、母の形見の合口の柄《つか》を握って、寄らば突殺すと云うけんまくゆえ、此方《こちら》も顔の色が違いました。
竹「宗達さん、あなたは怪《け》しからぬお方で、御出家のお身上《
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