をして其の鬮に当った者が何か買って来るので、夜中でも厭《いと》いなく菓子を買《けえ》に行《い》くとか、酒を買《けえ》に行《ゆ》くとかして、客の鬮を引いた者は坐ってゝ少しも動かずに人の買って来る物を食《しょく》して楽しむという遊びがあるのです」
鐵「へえーそれは面白《おもしれ》えが、珍らしい話か何かありませんかな」
医「左様でげす、別に面白い話もありませんですな」
鐵「気のねえ人だな何か他に」
○「手前《てめえ》出て先へ喋《しゃべ》るがいゝ」
鐵「喋るたって己《おれ》ア喋る訳には行《ゆ》かねえ、何かありませんかな、お医者さまは奥州仙台だてえが、面白《おもしろ》え怖《おっか》ねえ化物《ばけもの》が出たてえような事はありませんかな」
医「左様で別に化物が出たという話もないが、奥州は不思議のあるところでな」
鐵「へえー左様でござえやすかな」
医「貴方は何ですかえ、松島見物にお出《いで》になった事がありますかえ」
鐵「いや何処《どこ》へも行ったことはねえ」
医「松島は日本三景の内でな、随分江戸のお方が見物に来られるが此のくらい景色の好《よ》い所はないと云ってな、船で八百八島を巡り、歌を詠《えい》じ詩を作りに来る風流人が幾許《いくら》もあるな」
鐵「へえー松島に何か心中でもありましたかえ」
医「情死などのあるところじゃアないが、差当《さしあた》って別にどうも面白い話もないが、医者は此様《こん》な穢《きたな》い身装《みなり》をして居てはいけません、医者は居《い》なりと云うて、玄関が立派で、身装が好《よく》って立派に見えるよう、風俗が正しく見えるようでなければ病者《びょうしゃ》が信じません、随って薬も自《おのず》から利かんような事になるですが、医者は頓知頓才と云って先《ま》ず其の薬より病人の気を料《はか》る処が第一と心得ますな」
鐵「へえー何ういう……気を料る処がありますな」
医「先年乞食が難産にかゝって苦しんでいるのを、所の者が何うかして助けて遣りたいと立派な医者を頼んで診《み》て貰うと、是はどうも助からん、片足出ていなければ宜《よ》いが、片手片足出て首が出ないから身体が横になって支《つか》えてゝ仕様がない、細かに切って出せば命がないと途方に暮れ、立合った者も皆《み》な可愛そうだと云っている処へ通りかゝったのが愚老でな」
鐵「へえ……それからお前さんが産《うま》したのかえ」
医「
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