のようなはしたない下郎《げろう》を亭主に持つような身の上ではありません、無礼なことをお云いでない、彼方《あっち》へ行きなさい」
早「魂消《たまげ》たね……下郎え……此の狸女《たぬきあま》め……そんだら宜《え》え、そうお前の方で云やア是まで親父の眼顔《めかお》を忍んで銭を使って、お前《めえ》の死んだ仏の事を丹誠した、また尽《つく》しものを書いて貰うにも四百《しひゃく》と五百の銭を持ってって書いて貰ったわけだ、それを下郎だ、身分が違うと云えば、私《わし》も是までになって、あんたに其んなことを云われゝば友達へ顔向が出来ねえから、意気張《いきはり》ずくになりゃア敵《かたき》同志だ、可愛さ余って憎さが百倍、お前の帰《けえ》りを待伏《まちぶせ》して、跡を追《おっ》かけて鉄砲で打殺《ぶッころ》す気になった時には、とても仕様がねえ、然《そ》うなったら是までの命だと諦めてくんろ」
竹「あらまア、そんな事を云って困るじゃアないか、敵同志だの鉄砲で打《う》つのと云って」
早「私《わし》は下郎さ、お前《まえ》はお侍《さむれえ》の娘《むすめ》だろう、併《しか》し然《そ》う口穢《くちぎたな》く云われゝば、私だって快くねえから、遺恨に思ってお前《めえ》を鉄砲で打殺《ぶちころ》す心になったら何うするだえ」
竹「困るね、だけども私はお前に身を任せる事は何うしても出来ない身分だもの」
早「出来ないたって、病人が死んでしまえば便りのない者で困るというから、家《うち》へ置くべいと思って、人に話をしたのが始まりだよ、どうも話が出来ねえば出来ねえで宜《え》いから覚悟をしろ、親父が厳《やか》ましくって家《うち》にいたって駄目だから、やるだけの事をやっちまう、棒鼻《ぼうばな》あたりへ待伏せて鉄砲で打《ぶ》ってしまうから然《そ》う思いなせえ」
竹「まアお待ちなさい」
と止めましたのは、此様《こん》な馬鹿な奴に遇《あ》っては仕様がない、鉄砲で打《う》ちかねない奴なれど、斯《かゝ》る下郎に身を任せる事は勿論出来ず、併《しか》し世に馬鹿程怖い者はありませんから、是は欺《だま》すに若《し》くはない、今の中《うち》は心を宥《なだ》めて、ほとぼりの脱《ぬ》けた時分に立とうと心を決しました。
竹「あの斯うしておくれな私のようなものをそれ程思ってくれて、誠に嬉しいけれども、考えても御覧、たとえ家来でも、あゝやって死去《なくな》っ
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