《と》って宜《え》い時分だに、男振も好《よ》し何処《どこ》からでも嫁は来るだが、何故嫁を娶ってくれねえかと、父さまを悪く云って、お前《めえ》の方を皆《みん》な誉《ほ》めている、男が好《い》いから女の方から来るだろう」
早「来るだろうって……どうも……親父が相談ぶたねえから駄目だ」
久「相談ぶたねえからって、お前《めえ》は男が好《い》いから娘《むすめ》を引張込《ひっぱりこ》んで、優しげに話をして、色事になっちまえ、色事になって何処《どこ》かへ突走《つッぱし》れ……己《おら》の家《うち》へ逃げて来《こ》う、其の上で己が行って、父さまに会ってよ、お前も気に入るめえが、若《わけ》え同志で斯ういう訳になって、女子《おなご》を連れて己の家へ来て見れば、家も治《おさま》らねえ訳で、是も前《さき》の世に定まった縁だと思って、余《あんま》り喧《やか》ましく云わねえで、己が媒妁《なこうど》をするから、彼《あれ》を※[#「女+息」、第4水準2−5−70]子《よめっこ》にして遣《や》ってくんろえ、家に置くのが否《いや》だなら、別に世帯《しょたい》を持たしても宜《え》いじゃアねえかという話になれば、仕方がねえと親父も諦めべえ、色事になれや」
早「成れたって……成る手がゝりがねえ」
久「女に何とか云って見ろ」
早「間《ま》が悪くって云えねえ、客人だから、それに真面目な人だ、己《おら》が座敷へ入《へい》ると起上って、誠に長く厄介になって、お前には分けて世話になって、はア気の毒だなんて、中々お侍《さむらえ》さんの娘だけに怖《おっかね》えように、凛々《りゝ》しい人だよ」
久「口で云い難《にく》ければ文《ふみ》を書いてやれ、文をよ、袂《たもと》の中へ放り込むとか、枕の間へ挟《はさ》むとかして置けい、娘子《あまっこ》が読んで見て、宿屋の息子さんが然《そ》ういう心なれば嬉しいじゃアないか、どうせ行処《ゆきどこ》がないから、彼《あ》の人と夫婦になりてえと、先方《さき》で望んでいたら何うする」
早「何だか知んねえが、それはむずかしそうだ」
久「そんな事を云わずにやって見ろ」
早「ところが私《わし》は文《ふみ》い書《け》いた事がねえから、汝《われ》書いてくんろ、汝は鎮守様の地口行灯《じぐちあんどう》を拵《こしれ》えたが巧《うめ》えよ、それ何とかいう地口が有ったっけ、そう/\、案山子《かゝし》のところに何か居《い
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