は読めねえ様子だが、銭金《ぜにかね》の少しぐれえ入《い》るような事があって困るなら、沢山はねえが些《ちっ》とべいなら己が出して遣るべえ」
五「何だ、これ、お客様に失礼な、お前《まえ》がお客さまに金を出して上げるとは何だ、そんな馬鹿な事をいうな」
早「父《ちゃん》は何ぞというと小言をいうが、無ければ出してくれべえと云うだから宜《よ》かっぺえじゃアねえか」
五「其様《そん》な事ア何うでも宜《い》いから、早く洪願寺へ行って願って来い」
是から息子がお寺へ行って和尚に頼みました。早速得心でございますから、急に人を頼んで、早四郎も手伝って穴を掘り、真実にくれ/\働いて居ります。丁度其の晩の事でございますが、宿屋の主人《あるじ》が、
五「へえ娘《ねえ》さん、えゝ今晩の内にお葬りになりますように」
竹「はい、少し早いようでございますが、何分宜しゅう……多分に手のかゝりませんように」
五「宜しゅうございます、其の積りに致しました、何も多勢《おおぜい》和尚様方を頼むじゃアなし、お手軽になすった方が、御道中ゆえ宜しゅうございましょう」
と親切らしく主人《あるじ》が其の晩の中《うち》に、自分も随《つ》いて行って野辺送りを致してしまいました。
三十三
其の晩に脱出《ぬけだ》して、彼《か》の早四郎という宿屋の忰が、馬子《まご》の久藏《きゅうぞう》という者の処へ訪ねて参り、
早「おい、トン/\/\久藏|眠《ねぶ》ったかな、トン/\/\眠ったかえ。トン/\/\」
余りひどく表を敲《たゝ》くから、側の馬小屋に繋《つな》いでありました馬が驚いて、ヒイーン、バタ/\/\と羽目を蹴《け》る。
早「あれまア、馬めえ暴れやアがる、久藏|眠《ねぶ》ったかえ……あれまア締りのねえ戸だ、叩いてるより開けて入《へい》る方が宜《え》い、酔《よっ》ぱれえになって仰向《あおむけ》にぶっくり反《けえ》って寝《そべ》っていやアがる、おゝ/\顔に虻《あぶ》が附着《くッつ》いて居るのに痛くねえか、起《おき》ろ/\」
久「あはー……眠《ねぶ》ったいに、まどうもアハー(あくび)むにゃ/\/\、や、こりゃア甲州屋の早四郎か、大層《ていそう》遅く来たなア」
早「うん、少し相談|打《ぶ》ちに来たアだから目え覚《さま》せや」
久「今日は沓掛《くつがけ》まで行って峠え越して、帰りに友達に逢って、坂本《さかもと》の宿
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