《そっち》へ片附《かたし》ちめえ、此の野郎|頬被《ほっかぶ》りいしやアがって、何処《どこ》から入《へい》った」
と手拭をとって曲者の顔を見て驚き、
清「おや、此の按摩ア……汝《われ》は先月から己《おら》ア家《うち》へ来て、俄盲《にわかめくら》で感が悪くって療治が出来ねえと云うから、可愛相だと思って己ア家へ置いてやった宗桂だ、よく見りゃア虚盲《そらめくら》で眼が明いてるだ、此の狸按摩|汝《うぬ》、よく人を盲だって欺《だま》しアがった、感が悪くって泥坊が出来るかえ、此の磔《はッつけ》めえ」
と二つばかり続けて撲《ぶ》ちました。
曲「御免なさい、誠にどうも番頭《ばんつ》さん、実ア盲じゃアごぜえません、けれども旅で災難に遭いまして、後《あと》へは帰れず、先へも行《い》かれず、仕様が有りませんから、実は喰方《くいかた》に困って此方《こちら》はお客が多いから、按摩になってと思いまして入ったんでございますが、漸々《だん/\》銭が無くなっちまいましたから、江戸へ帰っても借金はあり、と云って故郷《こきょう》忘《ぼう》じ難《がた》く、何うかして帰りてえが、借金方の附くようにと思いまして、ついふら/\と出来心で、へえ、沢山《たんと》金え盗《と》るという了簡じゃアごぜえません、貧の盗みでございますから、お見遁《みのが》しを願います」
清「此の野郎……此奴《こいつ》のいう事ア迂濶《うっかり》本当にア出来ねえ、嘘を吐《つ》く奴は泥坊のはじまり、最《も》う泥坊に成ってるだ此の野郎」
曲「どうか御免なすって」
梅「いや/\手前は貧の盗みと云わせん事がある、貧の盗みなれば何故《なぜ》紙入れの中の金入れか銭入れを持って行《ゆ》かぬ、何で其の方は書付ばかり盗んだ」
曲「え……これはその何《なん》でございます、あゝ慌《あわ》てましたから、貧の盗みで一途《いちず》にその私《わたくし》は、へえ慌てまして」
梅「黙れ、手前はどうも見たような奴だ、此奴《こいつ》を確《しっか》り縛って置き、殴《たゝ》っ挫《くじ》いても其の訳を白状させなければならん、さ何ういう理由《わけ》で此の文を盗《と》った、手前は屋敷奉公をした奴だろう、谷中の屋敷にいた時分、どうも見掛けたような顔だ……手前は三崎の屋敷にいた事があったろうな」
曲「いえ……どう致しまして、私《わたくし》は麻布十番の者でごぜえます、古河《こが》に伯父がごぜえま
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